AI創薬のChai Discovery、4億ドル調達
この記事の要点
創薬向けAIモデルを開発するChai Discoveryが4億ドルのシリーズCを実施し、評価額は38億ドルに達した。イーライリリーなど大手製薬との取引実績も広がっている。
結論
創薬向けのAIモデルを開発するChai Discoveryが、4億ドルのシリーズC資金調達を実施した。評価額は38億ドルとなり、前回調達から一気に3倍に跳ね上がった。イーライリリーやファイザー、ノバルティスといった大手製薬会社との取引実績もあり、AIによる新薬候補の探索が投資家の間で急速に評価を高めている実態が表れている。
何が起きたのか
今回のシリーズCはIndex Venturesが主導し、Kleiner Perkins、Sequoia Capital、Dimensionが参加した。新たにBain Capital Ventures、Battery Ventures、Baillie Gifford、BDT & MSD、Sapphire Venturesなども加わり、既存投資家のThrive CapitalやOpenAI、Oak HC/FT、Menlo Ventures、General Catalystも引き続き出資した。Chai Discoveryは2024年の創業で、これまでにシード3000万ドル、シリーズA7000万ドル、シリーズB1億3000万ドルと調達を重ねており、今回で累計調達額は6億ドルを超えた。
同社はタンパク質などの分子同士の相互作用を予測し、狙った標的に強く結びつく分子を設計するAIモデルを開発している。最新モデルChai-3は、前モデルに比べて狙った標的への結合力と成功率を大きく高めたという。すでにイーライリリーやファイザー、ノバルティスといった大手製薬会社と提携しており、AIが設計した抗体が実際の創薬プロセスに組み込まれ始めている。
1年に3回の資金調達が意味すること
Chai Discoveryは創業からわずか2年足らずで、シード、シリーズA、シリーズBに続き、1年のうちに3回目となる大型調達を実施した。これほどの頻度で資金調達が続く背景には、モデルの世代交代のたびに製薬会社との実証結果が積み上がり、投資家が次の資金を投じる根拠を得やすくなっているという事情がある。Chai-1からChai-3への進化がおよそ2年で起きたことを踏まえると、AIモデルの改良速度そのものが、創薬という時間のかかる産業の意思決定サイクルを変えつつあるといえる。
現場の実務にどう効くか
創薬という専門領域の話に見えるが、AIモデルが実験室での試行錯誤を大幅に圧縮できるという事実は、研究開発を伴う業界全体にとって参考になる。候補となる分子や設計案をAIが事前に絞り込むことで、人手による検証の対象を絞れるという発想は、製薬に限らず素材や化学メーカーの研究開発部門でも応用の余地がある。生成AIをどう業務に組み込むかという基本的な考え方は/articles/what-is-generative-ai/や/articles/ai-cost-effectiveness/で整理している。
投資の動きとしても見ておきたい。/articles/news-20260705-crunchbase-h1-vc-record/で報じたとおり、2026年上半期のAIへの世界投資額は過去最高を更新しており、Chai Discoveryのような専門特化型のAIスタートアップへの資金集中が続いている。自社の業界に近い領域でどのようなAIスタートアップに投資が集まっているかを定点観測しておくと、将来の提携先や競合の見極めに役立つ。
OpenAIが出資者に名を連ねる意味
出資者の一覧にOpenAIの名前が含まれている点も見逃せない。生成AIの基盤モデルを開発する企業自身が、特定の産業分野に特化したAI企業に出資する動きは今後も広がるとみられる。汎用のモデルを提供するだけでなく、実際の業界知識やデータを持つ企業と組むことで、応用分野での存在感を強めたいという狙いがあるためだ。自社の業界で同じような動きが起きていないか、取引先や競合の資本関係を定期的に確認しておくと、提携や協業の機会を早くつかめる。
出典
よくある質問
Chai Discoveryは何を開発しているAI企業か
タンパク質など分子同士の相互作用を予測し、狙った標的に結びつきやすい分子を設計するAIモデルを開発している。最新モデルはChai-3。
今回の調達で評価額はいくらになったか
38億ドルとなり、2025年12月のシリーズB時点から大きく上昇した。詳しい数字は公式発表で確認してほしい。