Copilotで契約書をチェックする手順
この記事の要点
Microsoft Copilotで契約書をチェックする具体的な手順を解説。リスク条項の抽出・不利な表現の指摘・修正案の作成まで、法務担当・一般ビジネスパーソンが使えるプロンプト例付きで示す。
結論
Copilotを使うと、契約書のリスク条項の洗い出しと修正案の作成を数十分でできる。「不利な表現を指摘する」「修正案を出す」「同種の契約で一般的な条件と比較する」の3つの使い方が特に実用的だ。ただし、Copilotは法律の専門家ではないため、最終的な法的判断は弁護士または法務担当者が行うことが大前提になる。
使用できるCopilotのプランとアクセス方法
ブラウザ版(copilot.microsoft.com)
Microsoftアカウントで無料から使える。契約書テキストを貼り付けてチェックを依頼できる。重要な機密情報が含まれる場合は、社内のセキュリティポリシーを確認の上で使うこと。最新のプランとデータ取り扱いポリシーは公式サイトで確認してほしい。
M365 Copilot(Word統合版)
Microsoft 365の対象プランがあれば、WordでCopilotを使って契約書文書を直接編集できる。契約書をWordで受け取った場合、そのままCopilotに「このドキュメントのリスク条項を洗い出して」と指示できる点が特に便利だ。法人向けのM365環境では、入力データがMicrosoft内部での処理に限定される設定があるため、社内IT管理者に確認してほしい。プランの詳細はMicrosoft公式で確認してほしい。
契約書をチェックする手順
ステップ1:チェックの目的と懸念点を整理する
チェックを始める前に、以下を決めておく。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 契約の種類 | 業務委託契約(外注先との制作委託) |
| 自社の立場 | 発注者(委託者) |
| 特に気になる点 | 納品物の著作権、損害賠償の範囲、中途解約の条件 |
| 契約金額・期間 | 月額50万円・1年間 |
「特に気になる点」を先に決めることで、Copilotへの指示が具体的になり、見落としのないチェックができる。
ステップ2:全体のリスク条項を洗い出す
契約書の全文(または一部)をCopilotに渡して、リスク箇所の一覧を出させる。
以下の契約書条文をチェックしてください。私は発注者(委託者)の立場です。
【確認してほしい観点】
1. 発注者に不利な可能性がある条項
2. 曖昧な表現があり、将来的にトラブルになりやすい箇所
3. 一般的な業務委託契約と比べて異なる・珍しい条件
4. 抜け漏れになっている可能性がある保護規定
【出力形式】
条文番号・該当箇所・問題のポイント・リスクの深刻度(高/中/低)を表にしてください。
【注意】
あなたは法律の専門家ではないため、最終判断は弁護士・法務担当者が行うことを前提として、気になる点を網羅的に挙げてください。
【契約書テキスト】
(ここに契約書のテキストを貼る)
「深刻度」を出させることで、すべての指摘を同列に見てしまう問題を防げる。最初から深刻度の高い条項に絞って弁護士に相談することが現実的な対応になる。
ステップ3:特定の条項を深掘りする
リスク一覧の中から気になる条項を選んで、詳しい分析を求める。
以下の損害賠償条項について、詳しく分析してください。
【条文】
「乙が本契約の義務を履行できない場合、甲は乙に対して受領した委託料と同額を上限として損害賠償を請求することができる。」
【聞きたいこと】
1. この条文で発注者(甲)が困る可能性のある状況を2〜3例
2. 「受領した委託料と同額」という上限設定は一般的か、それとも特殊か
3. この条文を発注者に有利な方向で修正するとしたら、どう変えるか(修正案を1つ)
4. 反対に、受託者(乙)がこの条文で有利になっている点はどこか
最後に「この条文についての最終確認は弁護士または法務担当者に確認することを推奨する」という注記を付けてください。
「反対の立場からの視点」を求めることで、相手方が何を守ろうとしてこの条文を書いたかが分かり、交渉材料の整理に役立つ。
ステップ4:修正案を作る
気になる条項について、修正案の文章をCopilotに作らせる。
以下の契約条文を、発注者(私)の立場でより安全な表現に修正してください。
【元の条文】
「乙は、本業務の遂行にあたり必要と認める場合、甲の事前承認なく第三者に再委託することができる。」
【修正の方向性】
・再委託には甲の事前書面による承認を必須にしたい
・再委託先の業務品質も甲が確認できるようにしたい
・乙が再委託先の行為に連帯責任を負うことを明確にしたい
【出力形式】
1. 修正後の条文(そのまま使えるレベルの文章で)
2. 修正したポイントの説明(箇条書き3〜5点)
3. この条文を相手方が反発しやすい点(交渉の注意点)
注意:この修正案は法的に正確であることを保証するものではありません。使用前に法務担当者または弁護士が確認することを前提として提案してください。
「注意書き」をプロンプトに入れることで、Copilotが修正案に自動的に免責注記を付けてくれるようになる。この習慣を付けておくと、出力をチームに共有する際に誤解が生じにくくなる。
ステップ5:英文契約書をチェックする
英文契約書の場合は、翻訳とリスクチェックを同時に依頼できる。
以下の英文契約書テキストについて、以下の順で処理してください。
1. 全体を自然な日本語に翻訳してください
2. 翻訳後のテキストをもとに、日本企業(受注者)として注意すべき条項を5点挙げてください
3. 特に「Limitation of Liability」「Indemnification」「Termination」「Intellectual Property」のセクションについて、日本の標準的な商習慣と異なる点があれば指摘してください
(英文テキストをここに貼る)
英文法律文書は日本語に直訳すると意味が取りにくいことがある。Copilotに「自然な日本語に」と指定することで、後の確認作業が楽になる。
ステップ6(M365ユーザー向け):Wordで契約書を直接チェックする
M365 CopilotがWordで使える環境なら、契約書のWordファイルを開いた状態でCopilotに指示できる。
契約書全体が開いた状態で「このドキュメントを発注者の立場でリスクチェックして」と入力すると、文書の内容をCopilotが参照して分析を返す。特定の条文を範囲選択して「この段落を発注者有利に書き直して」という部分修正指示もできる。
法人向けのM365環境では入力データの取り扱いが個人向けと異なる場合があるため、社内IT部門またはMicrosoft公式サイトで確認してほしい。
よくうまくいかないパターンと対処法
問題1:「問題ない」という回答が返ってくる
Copilotが「特に問題のある条項は見当たりません」と答える場合がある。
対処:「問題がないとしても、改善できる点や読者(発注者)にとってより有利にできる点を必ず挙げてください」と付け加える。または「受託者の弁護士がこの契約書を読んだとき、有利な点として何を評価するか」という逆の視点から問いかけると、気づきを引き出しやすい。
問題2:修正案が法律用語として不正確
Copilotが出した修正文に、法律的に成立しない表現や日本語として不自然な条文が含まれる場合がある。
対処:Copilotの出力を「たたき台」として扱い、必ず法務担当者か弁護士が最終確認する前提で使う。Copilotには「このドラフトを社内法務が確認しやすいように、修正した理由を段落ごとに注記してください」と依頼すると、確認作業が効率よくなる。
問題3:長い契約書を一度に貼れない
契約書全体がCopilotの入力制限を超える場合がある。
対処:契約書を章・セクション単位に分割してCopilotに渡す。「第3章 業務の委託(以下の条文)のみチェックしてください」のように範囲を絞ることで、重要な部分から順番に処理できる。
問題4:機密情報の取り扱いが不安
企業間の機密情報が記載された契約書をブラウザ版Copilotに貼り付けることを躊躇う場合がある。
対処:社内のM365 Copilot(法人管理環境)を使う、または契約書から固有名詞・金額などの機密情報を伏せ字にした上でCopilotに入力する。「【A社】と【B社】の間の契約書で、委託料は【○万円】」のように仮名に置き換えて構造的な問題だけをチェックさせる方法が現実的だ。
他のCopilot関連作業との連携
契約書チェックの結果を社内で報告するためのメールや議事録を作る際はCopilotでメール文章を作る手順とCopilotで議事録を作る手順が参考になる。WordでCopilotを使って契約書関連の文書を整理する方法はCopilotでWordを使う手順で詳しく解説している。
まとめ
Copilotで契約書をチェックするには、自社の立場・特に気になる観点・契約の種類をプロンプトに明示してからテキストを渡すのが基本だ。全体のリスク洗い出し・特定条項の深掘り・修正案の作成という3段階で進めることで、見落としを減らせる。英文契約書には翻訳とリスク指摘を同時に依頼できる。ただし、Copilotは法律の専門家ではなく、出力はたたき台に過ぎない。最終的な判断と修正案の採否は、弁護士または社内法務担当者が確認することを前提として活用してほしい。
よくある質問
CopilotでNDA(秘密保持契約)をチェックできますか?
できる。「相手方に有利な条項はないか」「情報の定義が広すぎないか」「期間の設定は適切か」という観点でCopilotに分析を依頼できる。ただしCopilotは法律の専門家ではないため、最終確認は弁護士・法務担当者が行うことが前提だ。
Copilotに契約書をそのまま貼り付けて大丈夫ですか?
機密情報が含まれる契約書をブラウザ版の一般公開サービスに貼り付ける場合は、社内のセキュリティポリシーを確認することが先決だ。M365 Copilotを法人環境で使う場合は、入力データが外部に学習用として使用されないことを管理者設定で確認してほしい。最新のデータ取り扱いポリシーはMicrosoft公式で確認してほしい。
契約書の修正案もCopilotで作れますか?
作れる。「この条項を自社に有利な方向に修正してください」「一般的な表現に変えてください」と指示すれば修正案を出してくれる。ただし修正案の法的妥当性は弁護士・法務担当者が確認することが前提だ。
英文契約書のチェックにもCopilotは使えますか?
使える。英文をそのまま貼り付けて「日本語に翻訳した上で、リスク条項を指摘してください」と指示できる。ただし法律英語の解釈に微妙なニュアンスがある場合は、必ず専門家の確認を挟んでほしい。