職種別AI仕事術

広報の用語集をAIで作る方法

広報の用語集をAIで作る方法

この記事の要点

広報部門が社内外に配布する用語集をAIで作る手順を解説。新入社員研修・他部門向け広報基礎資料・メディア向け業界語解説など実務プロンプト例付き。

結論

広報が使う用語集は、作る目的と読者によって内容が大きく変わる。AIに「誰向けの・どんな用語集か」を明示してプロンプトを渡すと、定義文と使用例のセットを数分で出力できる。1人で10語を調べて書いていた作業が、AIの初稿生成と人間による確認・補正で20〜30分に収まるようになる。


広報が作る用語集の種類

広報部門が実際に使う用語集には、主に4種類がある。

社内向け広報基礎語集:他部門の社員が広報に関わる場面(発表文の確認依頼、メディアから直接連絡があった場合の対応など)で使う用語をまとめたもの。「プレスリリース」「エンバーゴ」「オフレコ」のような広報固有語を平易に説明する。

新入社員・異動者向けオリエンテーション用語集:広報部門に新たに配属された人が、1週間以内に覚えるべき語をまとめたもの。

危機対応語集:炎上・不祥事対応で使ってよい言い回しと使ってはいけない言い回しをまとめたもの。「遺憾に思います」「お詫び申し上げます」の使い分け、「ノーコメント」の使用可否など。

メディア・業界向け語集:自社の技術・製品領域で特殊な用語がある場合に、記者向けに配布する解説資料。理解の齟齬から生まれる誤報を防ぐ目的がある。


使うAIツール

テキスト生成AIで定義文を出力し、NotionやGoogleドキュメントで管理する形が一般的だ。ChatGPT(GPT-4o)やClaude 3.5 Sonnet以降のモデルは、専門用語の一般的な定義を整理するのが得意だ。ただしAIが出す定義は一般的なものであり、自社ポリシーに基づく定義は人間が加える必要がある。各ツールの料金・機能の最新情報は公式サイトで確認してほしい。


手順:ステップ別解説

ステップ1:誰のための・何語の・どんな形式かを決める

用語集作成の前に、次の3点を固める。

  • 読者:新入社員か、他部門の社員か、記者か
  • 語数:10語か30語か(読者の習熟度で変わる)
  • 形式:見出し語+定義文のみ、使用例付き、NGワード対比表付き

この3点をAIへのプロンプトに明示すると、用途に合った出力が得られる。

ステップ2:社内向け広報基礎語集を作らせる

以下の条件で、社内向けの広報基礎用語集を作成してください。

[読者]
広報未経験の社員(営業・人事・開発など他部門)が、広報部門と連携する際に困らないようにするための資料

[収録してほしい語の領域]
- メディア対応の基本用語(プレスリリース・エンバーゴ・クリッピング・オフレコ・取材申込 など)
- 発表・広報活動の用語(記者会見・バックグラウンドブリーフィング・ファクトシート)
- デジタル広報の用語(プレスキット・ニュースルーム・メディアリスト)

[形式]
- 語数:20語
- 各語に:見出し語・平易な定義(2〜3文)・実際の使用例1文
- 専門用語の定義に専門用語を使わない
- 表形式で出力(語 / 定義 / 使用例)

注意:業界標準的な定義を書く。自社固有の定義は別途追記するため空欄にする。

「専門用語の定義に専門用語を使わない」はAIへの指示として有効だ。書かないと「エンバーゴとは、解禁日を設けた情報管理のことです」のような循環定義が出やすい。

ステップ3:危機対応語集を作らせる

以下の条件で、危機対応時に広報担当者が参照する言い回し対照表を作成してください。

[目的]
炎上・不祥事発生時に、適切な表現と避けるべき表現を素早く参照できるようにする

[収録してほしい項目]
- お詫びの言葉の使い分け(「申し訳ありません」「遺憾に思います」「深くお詫び申し上げます」など)
- コメントを避ける際の適切な表現(「ノーコメント」以外の言い方)
- 記者への返答で使ってはいけない言い回し
- SNSでの謝罪文で多用される避けるべきフレーズ

[形式]
- 対比表(使える表現 / 避けるべき表現 / 理由の3列)
- 語数:15〜20項目
- 各項目に「このような場面で使う」という具体的なシナリオを1行添える

注意:法的・外交的に微妙な表現については「法務確認が必要」と記載する。

危機対応語集は「使ってよい言い回し」より「使ってはいけない言い回しとその理由」の方が実務で役立つ。この点をプロンプトに明示する。

ステップ4:新入社員・異動者向け用語集を作らせる

以下の条件で、広報部門に異動・配属されたばかりの社員向け用語集を作成してください。

[読者]
広報業務が初めての社員。入社1年目〜3年目のビジネスパーソンを想定。

[最初の2週間で知るべき語の範囲]
- 広報の仕事の種類(メディアリレーション・IR・インナーコミュニケーション・危機対応)
- 日常業務でよく使う略語(PR・IR・CSR・ESGなど)
- 記者との関係づくりで大切な概念(信頼・情報管理・クレジット)

[形式]
- 語数:25語以内
- 定義は2文以内。平易な言葉で書く
- 「知っておくと失礼にならない」「誤解しやすい」などの注釈を各語に1行添える
- 読み仮名をつける

「読み仮名をつける」は新入社員向け資料で意外に効果的だ。カタカナ語や漢字語で読み方が不明なまま使い始める状況を防げる。

ステップ5:自社固有の情報を加える

AIが出した用語集に、次の情報を人間が加える。

  • 自社ポリシーに基づく定義・使用制限
  • 使ってはいけない表現(ブランドガイドライン上の制限)
  • 自社製品・サービス名の正式表記
  • 取材対応の際の窓口・連絡先
  • 「公式の回答はこちらを参照」のリンク・参照先

この補完作業を経てはじめて、社内で共有・配布できる文書になる。AIの出力をレビューなしにそのまま配布しないことが重要だ。


広報固有の具体例

例1:M&A発表前のメディア向け業界用語解説集

製造業の広報担当者が、業界特有の技術用語を持つ企業とのM&Aを発表する前に、記者向けの業界用語解説集を作成した。プロンプトには「製造業の専門用語を経済紙の記者でも理解できる言葉で定義してほしい」と指示し、12語の解説が出力された。記者発表の当日に配布したところ、技術面の質問がほぼなく、ビジネスインパクトに関する質問に時間を集中できた。

例2:危機対応研修用の言い回し対照表

食品メーカーの広報部門が、年1回の危機対応研修に向けて「使ってよい言い回し・使ってはいけない言い回し」の対照表を作成した。AIに「食品の品質問題が発覚した際の広報担当者の発言における、適切な表現と避けるべき表現を20項目で対比表にしてほしい」と指示した。出力を法務部門がレビューし、5項目を修正した後に研修資料として採用した。研修後のアンケートで「具体的な言い回しが覚えやすかった」という回答が参加者の8割から得られた。


うまくいかない場合のポイント

定義が教科書的すぎて使えない

汎用的すぎる定義が出る場合は、「読者は〇〇を毎日の業務でどう使うかを知りたい」と使用場面を具体的に指定する。「メディアリレーションズとは〜である」ではなく「メディアリレーションズを使って、記者に新製品の取材をしてもらうためにやること」の視点で書くよう誘導できる。

語が多すぎる・少なすぎる

語数の上限をプロンプトに明示する。「20語以内」と書けばAIは20語前後で出力する。それでも多い場合は「この中から最も優先すべき10語に絞ってほしい」と絞り込みを別のプロンプトで依頼する。

使用例が不自然

AIが書く使用例は「〜を実施するにあたり、〇〇が活用されます」のような形式的な文になりやすい。「実際の業務会話や社内メールで出てくるリアルな例文にしてほしい」と指定すると改善される。

NGワードの理由が書かれていない

「使ってはいけない」とだけ書かれても実務で使いにくい。プロンプトに「避けるべき理由(誤解されやすい・法的リスクがある・感情的に受け取られやすいなど)を1行で添える」と指定すると、理由付きで出力される。


関連記事

用語集を活用する場面として、危機対応時の言い回しを磨きたい場合は広報の危機対応文書をAIで作る方法が参考になる。新入社員への研修資料全体を整備するには広報の仕事をAIでタスク分解する方法で全体像を把握してから個別の文書を作る順番が効率的だ。社内向け発信の改善には広報の社内報記事をAIで作る方法も合わせて読んでほしい。

よくある質問

広報用語集はどんな場面で使いますか?

新入社員や異動者への広報業務オリエンテーション、他部門が広報に協力する際の共通言語づくり、海外メディア対応の際の用語統一、危機対応時に使ってよい言い回しと使ってはいけない言い回しの整理、などに使う。

AIで作った用語集の信頼性は大丈夫ですか?

AIは一般的な定義を出すことは得意だが、自社固有の定義・ポリシー・使用禁止ワードは知らない。初稿として使い、法務・経営陣・広報責任者によるレビューを経てから正式な文書として扱う。

何語くらいの用語集が適切ですか?

用途による。新入社員向けなら20〜30語、特定施策向けなら10〜15語、危機対応向けなら10語前後が扱いやすい。多すぎると読まれないため、「必ず知ってほしい語」に絞ることが重要。

用語集はどこで管理すればいいですか?

NotionやConfluenceなどのドキュメントツールで管理すると、更新・共有が容易になる。PDFで配布するより「生きたドキュメント」として更新できる形が望ましい。