生成AI活用企業の67%が「人が起動」 自動化はこれから
この記事の要点
Merの実態調査で、生成AIを使う企業の67.1%が人の指示で動かす段階にとどまることが分かった。AI利用を横断で追える企業は13.0%、社内データ未整備は50.7%。エージェント化の前提が整っていない現状が数字で示された。
結論
生成AIを業務で使う日本企業のうち、67.1%が「人が起動して使う」段階にとどまることが、Merの実態調査で分かった。予定や業務システムの変化をきっかけにAIが自動で動く企業は29.3%だ。さらに、AIの利用記録を組織横断で追える企業は13.0%、顧客情報や案件情報などの社内データが整っていない企業は50.7%にのぼった。AIに仕事を任せる自動化が話題になる一方で、その前提となる土台がまだ整っていない現状が数字で示された。
調査の中身
この調査は、従業員100名以上の企業に勤め、業務で生成AIを活用している責任者・担当者548名を対象に、2026年6月24日から25日にかけて実施された。回答者はいずれも自社でAIを使っている当事者であり、導入検討中ではなく実際の運用の実態を映している。
数字を整理すると、AIが動き出すきっかけは大きく二つに分かれる。一つは、人がチャットに指示を入れたり定型の指示を実行したりする形で、これが67.1%。もう一つは、スケジュールや業務システム上の変化を合図にAIが自動で立ち上がる形で、こちらは29.3%にとどまった。いま多くの企業が使っているのは、人が呼び出して初めて動く生成AIだ。
利用の記録面も心もとない。AIの利用状況を組織全体で横断的に追える、と答えた企業は13.0%だけだった。誰がどの業務でAIを使い、どんな出力を得たのかを会社として把握できていない企業が大半を占める。使っている実感はあっても、それを会社として管理・改善できる状態には遠い。
この数字が示すのは、日本企業の生成AI活用が「試している」段階から「業務に組み込む」段階へまだ移り切っていない現実だ。個人が思い思いに使う分には広がったが、会社としてどこで何に使うかを設計し、記録し、改善する仕組みは追いついていない。話題の中心が自動で動くエージェントに移る一方で、足元の土台にはまだ隙間がある。
なぜ自動化が進まないのか
自動化の壁は、技術より土台にある。AIが自動で動くには、判断のもとになる社内データが整理されている必要がある。ところが調査では、顧客情報や案件情報などの社内データが「整備されていない」と答えた企業が50.7%と半数を超えた。データが散らばったままでは、AIに任せても正しい判断はできない。
この構図は、他の調査とも一致する。組織としてAI導入できた企業は26.8%にとどまるという結果や、効率化は66%が実感しても売上向上は限られるというデロイトの調査も、個人の利用は進む一方で組織としての活用が追いつかない現実を示している。
現場の実務にどう効くか
AI推進担当がこの調査から取るべき行動ははっきりしている。エージェント化を急ぐ前に、二つの土台を先に固めることだ。
一つ目は、AIの利用を横断で追える仕組みを持つこと。誰がどの業務で使っているかを把握できて初めて、効果測定も安全管理も成り立つ。Claude法人版の支出管理と分析のように、利用の可視化を支える機能も各社が整え始めている。
二つ目は、社内データの整備だ。AIに任せたい業務ほど、その業務が扱うデータを先に整える。顧客情報や案件情報がばらばらのままでは、自動化はかえって事故を招く。データが整っている一部の業務から自動化を試し、効果を確かめて広げる進め方が現実的だ。導入全体の判断は生成AI導入の費用対効果の考え方も参考にしてほしい。
順番を間違えないことが肝心だ。自動で動くエージェントは確かに魅力的だが、記録の仕組みとデータの整備という土台がないまま導入すると、どこで何が起きているか分からないまま自動処理だけが走る状態になる。まずは人が起動して使う今の段階で、利用の記録を残し、扱うデータを整える。その上で、条件が整った業務から自動化へ進む。67.1%という数字は遅れではなく、土台を固める途中経過だと捉えたほうがよい。数字を追うより、まず自社の土台がどの段階にあるかを確かめることが先決だ。
出典
よくある質問
調査で最も重要な数字はどれですか
生成AIを使う企業の67.1%が、人がチャットに指示を入れて動かす段階にとどまる点です。予定や業務の変化をきっかけにAIが自動で動く企業は29.3%でした。多くの企業がまだ手動での利用にとどまっています。
自社が次に進むには何から始めればよいですか
AIの利用記録を横断で追える仕組みと、顧客情報や案件情報などの社内データの整備が先です。調査では横断追跡できる企業が13.0%、データ未整備が50.7%でした。この土台がないと自動化は事故につながります。