カスタマーサービス向けプロンプト集:対応品質を上げる使い方
この記事の要点
CS業務でAIを活用するための場面別プロンプト集。返信文の下書き、クレーム対応の謝罪文、感情的なお客様への対応文、FAQ記事作成、ナレッジ記事化、月次レポートの文章化まで実例付きで解説します。
カスタマーサービスの仕事で最も時間がかかるのは「文章を書く」場面です。問い合わせへの返信、クレームへの謝罪文、FAQ記事の整備、月次の報告書。どれも型が決まっているにもかかわらず、毎回ゼロから書いています。
AIはこの「型があるが毎回書く手間がかかる文章」を得意としています。この記事では、CS業務の各場面で使えるプロンプトを紹介します。プロンプトの基礎についてはプロンプトとは何かを合わせて確認してください。
CS業務でAIを使える場面
AIが特に力を発揮するのは以下の4つです。
返信文の下書き作成:問い合わせ内容を入力するだけで、返信のたたき台を数秒で生成できます。担当者は「ゼロから書く」ではなく「確認して送る」に変わります。
難しい対応の壁打ち:クレームや感情的なお客様への対応方針を迷ったとき、AIに「どう返すべきか」を相談する使い方もあります。
FAQ・ナレッジ記事の整備:蓄積した対応事例をFAQや手順書に変換する作業は、AIが最も効率化しやすい工程の一つです。
報告書の文章化:問い合わせ件数やカテゴリ別の傾向を数値から文章にする工程を短縮できます。
場面別プロンプト集
一般的な問い合わせへの返信文下書き
お客様からの問い合わせ内容と、返すべき事実をセットで入力します。
以下の問い合わせへの返信文の下書きを書いてください。
【問い合わせ内容】
注文した商品がまだ届かない。注文してから1週間が経過している。
【返信に含める事実】
・注文日:6月3日
・発送日:6月5日
・配送業者:ヤマト運輸
・追跡番号:1234567890
・現在のステータス:配送センターに到着済み、配達予定日は6月10日
【条件】
・丁寧かつ簡潔に(200字以内)
・追跡方法を案内する
・個人名は使わず「お客様」で統一する
「200字以内」のように文字数を指定すると、無駄なく読みやすい返信になります。
クレーム対応の謝罪文と解決策の提示
クレーム対応では、謝罪と解決策の両方を過不足なく含めることが求められます。
以下の状況でのクレーム対応文を書いてください。
【クレームの内容】
注文と異なる商品が届いた。急ぎで必要だったのに、対応が遅い。
【対応方針】
・誤配について謝罪する
・正しい商品を翌日配送で送る(費用は当社負担)
・誤送した商品は回収せず、お客様に差し上げる
【条件】
・謝罪は率直に行うが、過剰な謝罪表現は使わない
・実行できない約束は含めない
・解決策は具体的な日程で示す
・文字数:300字前後
「実行できない約束は含めない」をプロンプトに明示することが重要です。AIは善意で「再発しないよう万全を期します」のような表現を入れることがありますが、それが後でクレームになるリスクがあります。
感情的なお客様への対応文
怒りや不満を強く表明しているお客様への対応文は、トーンの調整が難しいです。
以下の状況で、感情的に怒っているお客様への対応文を書いてください。
【お客様の発言】
「2回も同じミスをされた。本当に信頼できない。もう二度と使わない」
【対応方針】
・感情に共感し、お客様の怒りを受け止める
・2回ミスを起こした事実を認める(言い訳しない)
・具体的な改善策として、次回から担当者を変更し確認プロセスを追加することを伝える
・強制的な引き止めはしない
【トーンの指示】
・誠実で落ち着いたトーン
・「誠に」「深く」などの形式的な謝罪ワードを多用しない
・お客様の立場に立った言葉で書く
・文字数:250字程度
「トーンの指示」を別項目で入れると、言葉遣いの細かいニュアンスが反映されやすくなります。
よくある質問からFAQ記事を作る
同じ問い合わせが繰り返されているなら、FAQ化して問い合わせ件数そのものを減らせます。
以下の問い合わせ事例をもとに、サポートページに掲載するFAQ記事を作成してください。
【問い合わせ事例(過去1か月で10件以上)】
・「解約はどこからできますか?」
・「解約後もデータは残りますか?」
・「解約後に再契約はできますか?」
【条件】
・質問と回答のセット形式で3問作る
・回答は各100字以内
・専門用語は使わない
・「〜できます」「〜してください」で統一する
【実際の回答内容】
・解約はマイページ→設定→解約申請から可能
・データは解約日から30日間保持、その後自動削除
・再契約は解約後いつでも可能。データは削除後は復元不可
対応事例をナレッジ記事に変換する
対応事例をそのまま内部ナレッジ記事にする作業も、AIが効率化できます。
以下の対応事例を、後から担当者が参照できるナレッジ記事にまとめてください。
【事例の概要】
・問い合わせ内容:パスワードを忘れた、再設定メールが届かない
・原因:メールアドレスに入力ミスがあった(ドメインが間違っていた)
・解決手順:
1. 登録メールアドレスを確認(管理画面から変更可能)
2. 正しいメールアドレスに更新後、再設定メールを再送
3. 解決を確認してクローズ
【記事のフォーマット】
・見出し:問い合わせのカテゴリと状況
・原因:何が起きていたか
・確認手順:どの順番で確認するか(番号付き)
・解決策:具体的な手順
・関連ナレッジ:(今回は空欄でOK)
月次の問い合わせトレンドレポートの文章化
数値データを文章に変える工程はAIが得意です。集計済みのデータをそのまま貼り付けて文章を生成させます。
以下の問い合わせデータをもとに、上長への月次報告書用の文章を書いてください。
【2026年5月 問い合わせ件数】
総件数:247件(前月比+18件、+7.9%)
カテゴリ別内訳:
・配送関連:89件(前月比+24件、最多カテゴリ)
・請求・支払い:51件(前月比+2件)
・操作方法:48件(前月比-8件)
・クレーム:28件(前月比+5件)
・その他:31件
【条件】
・200字以内のサマリーと、注目すべき動向1点を含める
・数字を正確に使う
・対応策の提案も1文添える
送信前の確認ポイント
AIが生成した文章をそのまま送ることは避けます。送信前に必ず次の3点を確認します。
個人情報の混入:お客様の名前・住所・連絡先がAIの出力に含まれていないか確認します。特に「田中様」のように入力した情報が文中に出てくる場合があります。
過剰な約束:「二度とこのようなことが起きないようにします」「〇〇を保証します」のような実行が難しい表現が入っていないか確認します。こうした表現は後のトラブルにつながります。
事実誤認:日程・金額・手順など、事実に関する情報はAIの出力と元の情報を照合します。AIは文章は上手ですが、数字を間違えることがあります。
対応品質を上げるための使い方
AIを使うことで、CS担当者は「文章を書く時間」ではなく「対応方針を考える時間」に集中できます。下書きはAIが作り、「これで正しいか・過不足ないか・送っていいか」を人間が判断する分担が、品質と効率を両立させます。
プロンプトをチーム内で共有する方法については社内プロンプトライブラリの作り方で詳しく解説しています。CS業務でよく使うプロンプトをライブラリに登録することで、担当者が変わっても対応品質を一定に保てます。
また、対応文のトーン調整にはロールの指定が効果的です。ロール指定プロンプトでは「経験豊富なCSスタッフとして〜」という指定方法と効果を解説しています。
よくある質問
お客様への返信文をAIに作らせても大丈夫ですか?個人情報が気になります。
お客様の個人名・連絡先・注文番号などの個人情報は入力前に削除または仮名に置き換えてください。「田中様から〜の問い合わせ」という情報は「お客様から〜の問い合わせ」に置き換えるだけで精度は下がりません。AIへの入力前に個人情報を取り除く手順を、チームのルールとして明文化しておくと安全です。
クレーム対応文をAIに書かせると、過剰な謝罪になることがありますか?
プロンプトに「事実を認める謝罪にとどめ、過剰な謝罪や不必要な約束はしない」と明示すると防げます。また、生成された文章を送信前に必ず人間が確認し、事実と異なる表現や、実行できない約束が含まれていないかを確認することが必須です。
感情的なお客様への対応文は、AIにどこまで任せられますか?
感情に寄り添うトーンの文章生成はAIが得意です。ただし、対応の内容(返金するかどうか・どこまで謝罪するか)は業務判断が必要です。文章の「形」をAIに作らせ、対応方針の「中身」は人間が判断する分担が現実的です。