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ChatGPTで課題を構造化する手順:原因の候補を漏れなく並べる

ChatGPTで課題を構造化する手順:原因の候補を漏れなく並べる

この記事の要点

ChatGPTで課題を整理するときは、いきなり原因を聞かず大分類を4つ以内で出させ、1つずつ掘り下げます。通販会社の一次回答の遅れを例に、重なりと抜けの潰し方、思いつきとデータの分け方、着手する課題の絞り方を、プロンプト例つきで解説します。

結論

漠然とした困りごとをChatGPTに渡して「原因を挙げてください」と頼むと、どの会社にも当てはまる一般論が並びます。先に大分類だけを4つ以内で出させ、実態と合うものを選んでから1つずつ掘り下げる往復に変えると、自社の事情が入った並びになります。掘り下げた原因は、誰かがそう言っているだけのものと手元のデータで確かめられるものに分け、着手する1つを評価軸で選びます。

なぜ「原因を挙げてください」では使えないのか

「一次回答が遅い。原因を挙げてください」と送ると、人員不足、マニュアルの未整備、ツールの分散、教育の不足といった項目が10個ほど返ってきます。どれも間違いではありません。この一覧を持って会議に出ても、議論は動きません。

理由は2つあります。ひとつは粒度がそろっていないことです。「人員不足」と「返信テンプレートが古い」が同じ階層に並ぶと、比べる土台がありません。もうひとつは、自社の事情がひとつも入っていないことです。ChatGPTは業界の一般的な話から書き始めるので、その会社で実際に起きていることは反映されません。

頼み方を置き換えます。

返ってこない頼み方材料になる頼み方
原因を挙げてください原因を挙げる前に、この課題を分ける切り口を2通り提案してください
課題を構造化してください大分類だけを4つ以内で出し、そこで止めてください
深掘りしてくださいこのうち初回の振り分けだけを、下に2階層だけ展開してください
優先順位をつけてください優先順位をつける前に、判断に使う軸の候補を5つ出してください

一度に完成品を求めない点が共通しています。全体の流れは6つです。

  1. 前提を置く
  2. 大分類だけを出させる
  3. 選んだ1つを掘り下げる
  4. 重なりと抜けを潰す
  5. 思いつきとデータで裏づく原因を分ける
  6. 着手する1つを評価軸で選ぶ

この記事では、化粧品と日用品をオンラインで販売する従業員150名ほどの会社で、問い合わせの一次回答が遅れている状態を整理します。サポート担当は8名、メールとチャットで月におよそ3,000件を受けている想定です。

前提を書いた入れ物を用意する

ChatGPTには案件ごとのプロジェクトという入れ物と、すべての会話に効くカスタム指示があります。課題の構造化は数日にわたって往復するので、案件ごとのプロジェクトを作り、そこに前提を置くほうが混ざりません。

このプロジェクトでは、当社のカスタマーサポートで起きている
「一次回答が遅い」という状態の原因を整理します。

【前提】
・化粧品と日用品をオンラインで販売している。従業員は150名
・サポート担当は8名。メールとチャットで月におよそ3,000件を受けている
・一次回答は翌営業日までを社内の目安にしているが、超える日が増えている
・私はサポート課の課長で、来月の予算会議までに着手する施策を1つ決めたい

【守ってほしいこと】
・私が伝えていない数値、比率、期間を、事実であるかのように書かない
・数値が要る箇所は空欄にして「要確認」と書く
・原因を挙げるときは、根拠が私の説明にあるのか一般論なのかを毎回区別する
・私が「次へ」と書くまで、次の階層に進まない

最後の1行が往復を作ります。これを入れないと、大分類を頼んだつもりでも第3階層まで一気に書かれ、どこを直せばよいのか分からなくなります。

プランや時期によって使える機能が異なるため、最新の仕様は公式情報で確認してください。プロジェクトが使えない環境なら、この前提文を会話の1通目に貼り付ければ同じように動きます。

手順1:大分類だけを出させて、そこで止める

最初に決めるのは原因ではなく、分ける切り口です。切り口が変われば、そのあと出てくる原因はすべて変わります。

一次回答が遅いという状態を、原因の大分類に分けてください。
この段階では下位の原因を書かないでください。

【条件】
・大分類は4つ以内
・分け方の切り口を先に1行で示す。
  たとえば「問い合わせが届いてから返るまでの流れの順に分ける」
  「人・仕組み・情報のどこに詰まりがあるかで分ける」など
・切り口の候補を2通り出し、それぞれで4つの大分類を並べる
・どちらの切り口が今回の目的に合うかを、理由を添えて勧める
・各大分類について、それが本当に効いているなら現場で何が観測されるはずかを
  1行で書く

最後の条件が後半で効きます。「初回の振り分けに詰まりがあるなら、受信から担当者が決まるまでの時間が、返信作成の時間より長いはずだ」という形で書かせておくと、手順5でそのまま確認項目になります。

流れの順に分ける切り口を選んだとすると、大分類は受信と振り分け、回答内容の作成、社内確認、送信後のやりとり、といった並びになります。この4つを見て違和感があれば、この時点で直します。ここを飛ばして下に進むと、最後まで違和感が残ったままの資料ができます。

手順2:選んだ大分類を1つだけ掘り下げる

4つすべてを同時に展開させてはいけません。出力は一気に増え、どの枝が実態に合っているのかを判断できなくなります。

「受信と振り分け」の大分類だけを掘り下げてください。
他の大分類にはまだ触れないでください。

【条件】
・下に2階層だけ展開する。3階層目には進まない
・第2階層は、この工程で起きうる詰まりの種類で分ける
・第3階層は、当社で実際に起きていそうな具体的な状態まで下ろす
・各項目の末尾に、確かめ方を1つ書く。
  確かめ方は「誰に聞くか」または「どのデータを見るか」のどちらかにする
・当社について私が話していないことを前提にした項目には、頭に「仮」と付ける

「仮」の印が、あとで自分を助けます。返ってくるのはたとえばこういう形です。

受信と振り分け
├─ 担当者が決まるまでに時間がかかる
│   ├─ 朝の一括確認まで未読のまま置かれている
│   │    確かめ方: 受信時刻と最初の既読時刻の差を集計する
│   └─ 仮 振り分け担当が1名で、その人の休みの日に滞留する
│        確かめ方: 振り分け担当に当番表を見せてもらう
└─ 担当が決まっても着手されない
    ├─ 先に届いた問い合わせが優先され、短時間で終わる案件が後回しになる
    │    確かめ方: 所要時間の短い案件の待ち時間を集計する
    └─ 仮 チャットとメールで担当が分かれ、両方を持つ人が滞る
         確かめ方: 担当者3名に1日の動きを聞く

残りの大分類も同じ形で、1つずつ頼みます。まとめて頼みたくなりますが、往復を分けたほうが結局は速く終わります。

手順3:重なりと抜けを潰す

4つの枝がそろうと、同じことを違う言葉で言っている項目が必ず出ます。ツリー全体を書き直させると差分が追えなくなるので、指摘だけを出させます。

いま出ている課題ツリーを、切り分けの観点から点検してください。

【点検する内容】
1. 2つ以上の項目が実質的に同じことを言っている箇所。どちらに寄せるか案を出す
2. 上の階層の言葉で分けたとき、下の項目がその分類に収まりきっていない箇所
3. この切り口では最初から視野に入らない原因。あれば別枠で挙げる
4. 1つの項目の中に、原因と結果が混ざっているもの

【条件】
・指摘は多くても7点に絞り、影響の大きい順に並べる
・各指摘について、直した場合のツリーの形を該当部分だけ書く
・ツリー全体を書き直さないでください

4番目の点検が効きます。「対応品質が低い」のような項目は、原因ではなく結果です。これを残したまま進むと、対策が「品質を上げる」になり、何も決まりません。

3番目で出てくるのは、工程の順に分けたことで視野から外れた原因です。採用が追いついていない、繁忙期に施策が重なっている、といった工程の外側の話がここで挙がります。今回の範囲に入れるかどうかは自分で決めます。

具体例1:問い合わせログを添付して、思いつきと裏づけを分ける

ここまでに出た原因は、すべて可能性の一覧です。社内で共有する前に、データで確かめられるものとそうでないものに分けます。ChatGPTにはファイルを添付できるので、問い合わせの一覧を読ませて判定させます。

顧客名やメールアドレスが入ったままのファイルを上げてよいかは、社内ルール次第です。判断がつかないときは、日時、区分、担当者の役割、経過時間といった列だけを残し、個人が特定できる列を記号に置き換えたファイルを作れば、切り分けには足ります。

添付したファイルは、直近3か月の問い合わせ一覧です。
顧客名とメールアドレスは記号に置き換えてあります。

いま出ている原因の候補それぞれについて、このデータで確かめられるかを
判定してください。

【出力】
表にしてください。列は次の5つです。
原因の候補 / このデータで確かめられるか / 見るべき列と集計の仕方 /
集計結果がどうなっていれば原因として支持されるか / 別に必要な情報

【条件】
・確かめられないものを、無理に確かめられると書かない。
  その場合は「このデータでは不可」と書き、代わりに何を見ればよいかを書く
・この段階では集計を実行せず、判定の表だけを返す
・列の意味が分からないときは、推測で埋めずに質問する

集計を先に走らせないのが、この指示の狙いです。判定の表を見ると、たいてい半分近くが「このデータでは不可」に落ちます。落ちたものは思いつきの側に置き、現場に聞くか、別の記録を探すかを決めます。残ったものだけを集計させると、原因の一覧が事実の一覧に変わります。

集計そのものの進め方は、カスタマーサポートのデータ集計・分析をAIで行う手順に詳しく書いています。

集計結果が出たら、支持されなかった原因を消さずに残します。「受信から着手までの待ち時間は短く、この原因は支持されなかった」という記録は、あとで同じ議論が蒸し返されたときに効きます。

掘り下げをどこで止めるか

第3階層まで下ろしたあと、まだ先がありそうに見えることがあります。止める基準を4つ決めておくと迷いません。

状態判断
明日誰が何をするかを1行で書けるここが底。止める
具体的な画面名、帳票名、当番表が出てきた止める
次に割ると意識が低い、風土が古いという言葉になるその手前で止める
確かめ方が書けない項目が続いている掘り下げではなく、確かめ方を先に探す

3つ目が現場では一番多く起こります。人の性質に行き着いた枝は、そこから先の対策が作れません。ひとつ上の階層に戻り、その状態を生んでいる仕組みや情報の側に言い換えられないかを試します。

いまの第3階層のうち、次の2つの項目について確認します。

・担当者の意識にばらつきがある
・ベテランと新人で対応品質に差がある

これらを、人の性質ではなく仕組みや情報の言葉に言い換えてください。

【条件】
・1項目につき言い換えの案を2つ出す
・言い換えた結果が、手を打てる対象になっているかを1行で説明する
・言い換えられないと判断した場合は、そう書いたうえで理由を述べる

具体例2:別画面でツリーを育て、着手する1つを絞る

会話の中でツリーを育てると、修正のたびに全体が出力し直され、どこが変わったのか追えなくなります。長い文書を別画面で編集する機能に出させると、ツリーの本体が横に残り、枝ごとに直せます。

別画面に出したツリーが固まったら、着手する課題を選びます。ここでも一度に答えを出させません。

データで支持された原因だけを対象に、着手する1つを選びます。

【手順】
1. まず評価軸の候補を5つ出してください。
   軸は当社の状況に即したものにし、一般的な言い方のままにしない
2. 各軸について、高い低いをどう判断するかの目安を書いてください
3. 私が軸を3つ選ぶまで、採点はしないでください

【軸に入れてほしい観点】
・サポート課だけで動かせるか、他部署の合意が要るか
・効果が出るまでの期間
・外したときに元に戻せるか

戻ってくる軸は、待ち時間の短縮幅、自部署だけで完結するか、月内に試せるか、失敗したときの後戻りのしやすさ、といった形になります。3つ選んで採点を頼むと、上位に残るのはたいてい影響が中くらいで、自分たちだけで来週から試せる施策です。

大きな原因を選びたくなりますが、他部署の合意と予算が要る施策は、選んだ時点で数か月止まります。来月の予算会議で1つ決めるという目的なら、自部署で回せるものを選び、効果を測ってから大きいほうに進みます。

選んだ課題を仕組みの入れ替えで解くと決めたなら、ChatGPTで要件定義を整理する手順がそのまま次の工程になります。

ChatGPTが出した原因を事実と混同しないために

課題ツリーは見た目が整っているぶん、そこに書かれていることが調査結果のように見えます。社内に出す前に3つを踏みます。

出どころを3つに分けて印を付けます。自分が前提として説明したこと、データで確認できたこと、ChatGPTが補ったこと。3つ目が混ざったまま資料になると、会議で「その数字はどこから来たのか」と聞かれて答えられません。

「仮」と付いた項目は、現場の担当者に読んでもらいます。読ませるのは原因の一覧ではなく、確かめ方の一覧にします。「受信から着手までの待ち時間を見ようと思うが、見るべきはこの列で合っているか」と聞くほうが、原因の当否を聞くより正確な反応が返ります。

資料にするときは、確かめられた原因とまだ確かめていない原因を分けて載せます。同じページに混ぜると、読んだ人は全部が調べ済みだと受け取ります。

同じ整理を他のツールで進める手順は、Geminiで課題を構造化する手順とClaudeで課題を構造化する手順にまとめています。

うまくいかないときの対処

大分類を頼んだのに第3階層まで書かれる。 前提に入れた「私が次へと書くまで進まない」という指示は、会話が長くなると効きが弱まります。掘り下げを頼む直前に、同じ1行をもう一度書き添えてください。

枝が10本以上に増えて収拾がつかない。 「今回の目的は来月の予算会議で1つ決めることです。この目的に関係しない枝を外し、残す枝を7本以内にしてください」と範囲を狭めます。外した枝は別の会話に退避させます。

項目の粒度がそろわない。 「各項目は、それを読んだサポート担当者が自分の1日の仕事のどの場面かを指せる粒度にしてください」と、読み手を指定して言い直します。抽象的だと伝えるより変わります。

もっともらしい比率が混ざる。 「問い合わせの約4割が返品に関するもの」といった数値が、こちらが渡していないのに入ります。出力から数字だけを拾い、自分の記録と突き合わせてください。根拠のないものはその場で消します。

同じ原因が何度も形を変えて出てくる。 ツリーが大きくなりすぎた合図です。確定した部分をファイルに書き出して保存し、新しい会話に添付して続きから進めます。

まとめ

いま抱えている困りごとをひとつ選び、その状態を3行で書くところから始めてください。ChatGPTにプロジェクトを作って前提を置き、大分類だけを4つ以内で出させ、違和感のないほうの切り口を選びます。選んだ枝を2階層だけ下ろし、各項目に確かめ方を書かせ、手元のデータで判定できるものだけを集計にかけます。残った原因に評価軸で点を付け、自部署で来週から試せる1つを選んで、効果の測り方まで決めてから会議に出します。前提文と6つのプロンプトを保存しておくと、次の課題では前提の中身を差し替えるだけで使えます。

よくある質問

ChatGPTに課題を整理させると一般論しか返ってきません。どうすればよいですか?

一度に完成した課題ツリーを求めているのが原因です。最初は大分類だけを4つ以内で出させ、実態に合うものを選んでから、選んだ1つだけを2階層下ろす往復に変えてください。自社の状況を前提として先に渡し、その前提に根拠がある項目と一般論とを区別して書かせると、使える材料が残ります。

課題の掘り下げはどこまで続ければよいですか?

その項目について、明日誰が何をするかを書ける粒度まで下りたら止めます。具体的な画面名や帳票名、担当者の役割が出てきたら、そこが底です。さらに割ると意識や風土といった手の出しにくい言葉になるため、その手前で打ち切ります。

問い合わせのログをChatGPTに読ませてもよいですか?

自社の生成AI利用ルールに従ってください。判断がつかないときは、顧客名とメールアドレスを記号に置き換え、日時、区分、担当者の役割、経過時間といった列だけを残したファイルを作れば、原因の切り分けには足ります。入力してよい範囲は情報システム部門に先に確認するのが確実です。