ChatGPTで比較表を作る手順:勤怠システムの選定資料を作る
この記事の要点
ChatGPTで比較表を作るときは、比較軸を選定の目的から決め、各社の資料を添付して埋めさせ、出典のない欄は空欄のまま残させます。勤怠システム3製品の比較を例に、プロンプトとExcelへの貼り戻し、確認の手順を解説します。
結論
ChatGPTで比較表を作る流れは、比較軸を決める、資料を添付して埋めさせる、埋まらなかった欄を自分で確認する、の3つに分かれます。事故が起きるのは2番目で、資料を渡さずに製品名だけを並べて頼むと、料金や機能の欄がもっともらしい値で埋まります。出典のない欄は空欄にするよう先に指示しておけば、空いたセルがそのまま次に調べることの一覧になります。
ChatGPTに任せる作業と、人が確かめること
| ChatGPTに任せる | 人が確かめること |
|---|---|
| 選定の目的から、比較軸の候補を出す | どの軸を残し、どの軸を捨てるか |
| 渡した資料から、該当する記述を各セルに写す | 写された内容が資料の原文と合っているか |
| 資料に書かれていない欄を空欄にし、理由を添える | 空欄をどの資料や問い合わせで埋めるか |
| 軸が多い表を、読み手に合わせて削る案を出す | 削ってよい軸かどうか |
| 表から読み取れる違いを文章で説明する | その説明を推奨の理由にしてよいか |
右の列を飛ばすと、体裁の整った表に根拠のない数字が並びます。比較表は読む人が細部を疑わない形式です。文章なら引っかかる記述も、罫線の中に入ると確定した事実に見えます。埋まっている欄より、空欄のほうが安全だと考えてください。
この記事では、従業員300名ほどのサービス業で、紙のタイムカードから勤怠管理システムに移すために候補3製品を比べる場面を例にします。人事部の担当者が選定資料を作り、部長と情報システム部門に説明するところまでを想定します。製品はA社、B社、C社の3つとします。
比較軸は、機能一覧ではなく選ぶ目的から決める
各社の資料を開くと、機能の一覧が並んでいます。それをそのまま列に並べると、40行の表ができあがります。読む側は全部を見られず、結局は価格だけを見て決めます。
軸は、今どこで困っているかと、決裁者が何を気にするかの2つから決めます。勤怠の例なら、直行直帰の多い営業部の打刻をどうするか、月末の集計で人事が何時間使っているか、給与計算の仕組みと連携できるか。この3つが選定の理由そのものなので、表の上のほうに置きます。多言語対応や顔認証の有無は、今の自社では判断に効きません。
ChatGPTには、製品名を出す前に目的だけを伝えて軸を出させます。
勤怠管理システムを選ぶための比較軸を作ってください。製品名はまだ挙げないでください。
【今の状況】
・従業員300名のサービス業。事業所は本社と営業所4か所
・今は紙のタイムカード。集計は人事の2名が月末に3日かけている
・営業部60名は直行直帰が多く、出社しない日の打刻ができていない
・給与計算は外部の社労士事務所に委託していて、毎月Excelで勤務時間を送っている
・36協定の残業上限を超えそうな社員を、月中に把握できていない
【条件】
・比較軸を10個出し、判断への効き方が強い順に並べる
・各軸について、なぜこの状況で必要なのかを1行で書く
・上位5つと下位5つに分け、上位5つを決裁者に見せる表の列にする想定で選ぶ
・「使いやすさ」のように人によって解釈が変わる軸は、
何をもって使いやすいとするかまで書く
・私が伝えていない前提が必要な軸は、その前提を質問として返す
最後の2つの条件が効きます。使いやすさという軸は、そのままでは誰も評価できません。「営業部の社員が、スマートフォンで打刻を完了するまでの操作回数」まで書ければ、各社の資料を見て埋められます。
具体例1:各社の資料を添付して、表を埋めさせる
軸が決まったら、3社の資料を添付します。料金表のPDF、機能紹介の資料、営業担当から届いた提案書。ChatGPTにはファイルを添付できるので、この3社分をまとめて読ませます。
添付する前に、社内の扱いを確認してください。各社から個別に受け取った見積書には、自社名や担当者名、他社には見せない条件が入っていることがあります。外部のサービスに上げてよい資料かどうかは、自社の生成AI利用ルールと、先方との秘密保持の取り決めに従います。判断がつかないときは、社名を伏せた公開資料だけを渡し、個別の条件は後から手で入れます。
添付した3社の資料から、比較表を作ってください。
【表の形】
・行が比較軸、列がA社・B社・C社
・比較軸は次の6つ
1. 打刻の方法
2. スマートフォンからの打刻可否と、必要な操作
3. 月次集計の出力形式
4. 給与計算への連携方法
5. 残業時間の上限に近づいた社員の通知機能
6. 初期費用と月額費用の体系
【守ってほしいこと】
・添付資料に書かれていることだけを書く。あなたが知っている情報は使わない
・資料に記載がない項目は、必ず空欄にする。「要確認」などの文字も入れない
・各セルの右に、その記述がどの資料の何ページにあったかを添える
・資料の記述が条件付きの場合は、その条件も1文で書く
・3社の記述の粒度が違う箇所は、表の下に「比較できていない点」として列挙する
空欄に文字を入れさせないのが、この指示の狙いです。「要確認」と書かれた表は、遠目には埋まって見えます。本当に空のセルが並んでいれば、資料を配ったときに誰かが必ず指摘します。
出どころの併記も外せません。あとから部長に「この月額はどこから来たのか」と聞かれたとき、資料の該当ページをすぐ開けます。出どころが書けないセルは、ChatGPTが資料の外から補った可能性が高いので、そこだけ原文と突き合わせます。
同じ資料を何度も読ませ直すのが面倒なときは、案件ごとのプロジェクトを作り、そこに資料と前提を置いておくと、会話を分けても続きから作業できます。プランや時期によって使える機能が異なるため、最新の仕様は公式情報で確認してください。
具体例2:空欄を、問い合わせ文に変える
表ができると、空欄が10か所ほど残ります。この空欄が選定の実務です。各社の営業担当に聞けば1日で埋まるものと、実際に触らないと分からないものが混ざっているので、分けます。
先ほどの表で空欄になっているセルを一覧にしてください。
【出力】
・1行につき、比較軸と会社名、なぜ空欄なのかを書く
・空欄を次の3つに分類する
A:各社に質問すれば回答が得られる
B:無料トライアルや画面を見ないと分からない
C:自社の情報がそろっていないため埋められない
・Aについては、そのまま送れるメールの本文を会社ごとに作る。
1通あたり質問は5問以内。当社の事情は最小限しか書かない
・Cについては、社内の誰に何を聞けばよいかを書く
Cの分類が出てくるのが、この頼み方の利点です。「給与計算への連携方法」が埋まらない理由が、各社の資料不足ではなく、自社が社労士事務所に送っているExcelの列構成を把握していないことだった、という状況は珍しくありません。相手に聞く前に自社を調べる必要があると分かります。
Aのメール本文は、そのままは送らず必ず読み直します。ChatGPTは丁寧に書こうとして、こちらの検討状況を必要以上に書き込むことがあります。他社と比較中であることをどこまで伝えるかは、交渉の判断です。
要望を整理して社内で合意を取る流れは、ChatGPTで要件定義を整理する手順にまとめています。
表が長くなったら、読む人を指定して削る
比較軸を6つに絞ったつもりでも、各社から回答が届くと行が増えます。注釈も増えます。部長に見せる資料としては、A4の紙1枚に収まる分量が限界です。
この比較表を、次の2つに分けてください。
1. 役員会で使う表。A4横1枚に収まる分量
・行は5つまで。1セルは25字以内
・費用は年間の総額に換算した行を1つ置く
・判断が分かれる箇所だけ、表の下に注釈を3つまで
2. 情報システム部門と人事で使う詳細表
・1の表から落とした項目をすべて含める
・空欄はそのまま残す
【条件】
・1の表から落とした項目について、落とした理由を一言ずつ書く
・年間総額に換算するとき、私が伝えていない前提で計算しない。
前提が足りない場合は換算せず、何が足りないかを書く
落とした理由を書かせておくと、役員会で「なぜこの軸がないのか」と聞かれたときに即答できます。詳細表のほうは、導入後に契約内容を確認する台帳としても使えます。
職種ごとの比較表の作り方は、情報システムの比較表をAIで作る方法にも整理しています。
ExcelやGoogleスプレッドシートに貼り戻す
ChatGPTが出すMarkdownの表をそのままExcelに貼ると、縦棒ごと1つのセルに入ります。列に分けるには、出力の形を変えてもらいます。
先ほどの表を、タブ区切りのテキストとして出力してください。
・1行目を列名にする
・セルの中に改行とタブを入れない。区切りが必要なときは読点を使う
・空欄は空のままにする
・出どころの注記は、表の右端に「出典」列としてまとめる
・表の前後に説明文を書かない。表だけを出力する
出力をコピーしてExcelのセルに貼ると、列に分かれて入ります。Googleスプレッドシートも同じです。カンマ区切りにすると、セルの中の読点で列がずれるので、タブ区切りのほうが崩れません。
貼り付けたあとに、空欄のセルだけ背景色を変えます。ExcelならF5キーで「セル選択」から空白セルを選び、まとめて塗りつぶせます。こうしておくと、資料を回したときに未確認の箇所が一目で分かり、誰かが親切心で推測を書き込むことを防げます。
長い文書をまとめて直したいときは、ChatGPTの長い文書を別画面で編集する機能を使うと、表の本体が横に残ったまま、会話で部分修正を指示できます。会話の中に毎回全文が出力し直されるのを避けられます。
公開情報を使うときは、必ず一次情報に当たる
各社の営業担当がつかまらず、公式サイトの情報で埋めたくなる場面があります。ChatGPTに検索させて埋めさせることもできますが、埋まった値をそのまま使ってはいけません。料金体系は改定され、プランの名前は変わり、キャンペーン価格が通常価格として表示されていることもあります。
公開情報で埋めたセルには、参照したページのURLと、いつ確認した情報かを併記させます。そのうえで、人がそのURLを開いて数値を目で確認します。開いた結果が違っていた場合は、ChatGPTを直すのではなく、表を直します。この確認を省いたまま社内に配ると、間違った金額が独り歩きして、後から訂正するほうが高くつきます。
契約に直接かかわる条件、たとえば最低利用期間や解約時の扱いは、公開情報ではなく見積書と契約書の文面を根拠にします。ここだけは資料の原文を人が読んで、表に転記してください。
同じ作業を他のツールで進める手順は、Geminiで比較表を作る手順とCopilotで比較表を作る手順にあります。
うまくいかないときの対処
空欄にする指示を無視して埋めてくる。 会話が長くなると、最初に置いた条件が効かなくなります。表を出力させる直前に、空欄の指示だけをもう一度書き添えてください。それでも埋まるときは、出力後に出どころ列が空のセルを拾い、そこを自分で空欄に戻します。
3社で粒度がそろわない。 A社の資料が詳しく、C社の資料が薄いと、表が不公平に見えます。粒度の差を表の下に書かせたうえで、薄い会社には同じ項目を質問として送ります。資料の厚さで評価が決まるのは避けたい事態です。
表の中の文が長くなる。 「1セル25字以内」と字数で指定すると短くなります。それでも入りきらない内容は、注釈に回すか、その軸自体が2つの論点を含んでいないかを疑ってください。
料金の計算が合わない。 初期費用と月額を年額に換算させると、ユーザー数や最低契約期間の前提がずれて合わなくなります。換算はスプレッドシート側で計算式にしたほうが確実です。ChatGPTには換算表の枠だけを作らせます。
古い資料と新しい資料が混ざる。 添付したファイルの日付を一覧にさせ、いちばん新しいものだけを使うよう指示します。改定前の料金表が混ざったままだと、表の一部だけが古くなります。
まとめ
手元にある候補の資料を3社分そろえ、目的だけを書いてChatGPTに比較軸を10個出させるところから始めてください。上位5つか6つを列に決め、資料を添付して「資料にないセルは空欄」と指示して埋めさせます。残った空欄を各社への質問と社内で調べることに分け、埋まった表をタブ区切りで出力してスプレッドシートに貼ります。最後に出どころ列を見ながら、数字のセルだけを原文と突き合わせてください。ここで使った比較軸の作り方は、次の選定でも状況の説明を差し替えるだけで使えます。
よくある質問
ChatGPTに製品名だけ伝えて比較表を作らせても大丈夫ですか?
料金や機能の欄が、実在しない値で埋まることがあります。各社の資料を添付して、そこに書かれていることだけを写させてください。資料がない項目は空欄にするよう指示し、空欄は自分で各社に問い合わせて埋めます。
ChatGPTが作った比較表をExcelに貼るとセルが分かれません。どうすればよいですか?
Markdownの表をそのまま貼ると1列に入ります。「タブ区切りのテキストで出力してください」と頼み直し、出力をコピーしてExcelに貼ると列に分かれます。Googleスプレッドシートでも同じ方法が使えます。
比較軸は何項目くらいが読みやすいですか?
決裁者に見せる表なら5から7項目が目安です。それ以上になるときは、判断に効く軸だけを本表に残し、残りを別表に回します。ChatGPTに「この表を見る人は誰で、何を決めるか」を伝えて絞らせると、削る候補が出ます。