GeminiでFAQを作る手順:ドライブの規程から社内向けに整える
この記事の要点
GeminiでFAQを作るときは、ドライブにある規程を参照させ、条番号と条文の引用を必ず添えさせます。社内の制度や手続きの問い合わせを例に、規程にない回答の見分け方、人事担当の承認、公開までの手順を解説します。
結論
Geminiで社内FAQを作るなら、規程をコピーして貼り付けるのではなく、Googleドライブにある就業規則や申請手順書をそのまま参照させます。そのうえで「回答には必ず条番号と条文の引用を添える。規程に書かれていないことは答えず、未回答のまま残す」と条件を付けると、規程に根拠のない回答が最初から見分けられる形で出てきます。人事や総務の担当者は、引用の付いていない回答から順に手を入れるだけで済み、20問の初稿を承認に回す状態まで目安として1時間ほどで届きます。
社内向けFAQの誤りは、制度の誤案内として残ります
人事や総務に寄せられる質問は、答えを間違えると社員の不利益になります。年次有給休暇の付与日数を1日多く書けば、その日数を前提に予定を立てた社員が困ります。育児休業の申し出期限を実際より遅く書けば、取得できるはずの期間が短くなります。社内向けだから顧客向けより気楽だ、とはなりません。むしろ制度に関する回答は、後から「FAQにこう書いてあった」と持ち出され、会社の説明責任が問われます。
ここでGeminiが補ってしまうのは、法律や世間の標準的な制度の内容です。育児休業や介護休業のように法律で枠組みが決まっている制度では、学習した一般的な説明が、自社の規程より詳しく、それらしい文章で出てきます。自社の規程が法律の定めを上回る内容を定めている場合も、下回らない範囲で独自の手続きを決めている場合も、その差が消えます。
差が消えた回答は読んで気づけません。「申し出は1か月前までに、所定の様式で人事部へ提出してください」と書かれていたとき、この1か月と所定の様式が自社の規程に由来するのか、Geminiが一般論から持ってきたのかは、文章からは判別できません。判別できる形で出させる指示が、この記事の中心です。
規程をGeminiに読ませる入口は3つあります
どこからGeminiを呼び出すかで、向いている素材が変わります。
| 入口 | 向いている場面 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| Geminiのアプリやウェブ画面 | 就業規則、育児介護休業規程、申請手順書など複数の文書をまとめて参照させたいとき | 似た名前の旧版を拾うことがある。読み込んだファイル名と更新日を必ず確認する |
| Googleドキュメントの中のGemini | 規程が1つの長い文書で、その文書の末尾にFAQを付け足したいとき | 開いている文書が中心になる。別の規程を足すときはファイル名で指定する |
| Gmailの中のGemini | 社員から届いた問い合わせの傾向を整理したいとき | 整理までが守備範囲。FAQの形に組むのはアプリかドキュメントで行う |
規程が複数のファイルに分かれている社内FAQでは、1つ目の入口が扱いやすくなります。この記事の手順もそこから進めます。プランや時期によって使える機能が異なるため、最新の仕様は公式情報で確認してください。会社のアカウントでは管理者が連携を止めていることもあります。連携が使えない環境では、規程をアップロードするか本文を貼り付ければ、以降の手順はそのまま使えます。
Geminiで社内FAQを作る手順
- 参照させる規程を決め、読み込んだファイルの版を確かめる
- 社員が実際に聞いていることを、質問として洗い出す
- 規程に答えがある質問と、ない質問を切り分ける
- 答えがある質問だけ、条番号と引用つきで回答を書かせる
- 引用のない回答と、条文からずれた回答を人が潰す
- 人事または総務の担当者が承認し、掲載する
読み込んだ規程の版を先に確かめる
社内の規程は、ドライブに何世代も残っています。「就業規則」で検索すると、改定前の版、改定案、労働基準監督署へ届け出た版が並びます。どれを読んだかを先に答えさせないと、廃止された条文をもとにFAQを作ってしまいます。
Googleドライブにある次の文書を確認してください。まだFAQは作らないでください。
- ファイル名に「育児・介護休業規程」を含む文書
- ファイル名に「休暇申請」を含む手順書
- ファイル名に「就業規則」を含む文書
確認できたら、次を教えてください。
1. 読み込んだファイル名、最終更新日、文書内に記載された施行日の一覧
2. 同じ名前で複数の版が見つかった場合は、そのすべてを挙げる
3. 各文書の章と条の見出し一覧
4. 文書どうしで食い違っている記述があれば、その箇所と、それぞれの記述
3番目の見出し一覧が、後の作業で効きます。回答に添えられた条番号が、この一覧に存在しない番号だった場合、その回答は規程の外から作られたと判断できます。
4番目の食い違いの確認も、社内文書では欠かせません。規程を改定したのに申請手順書を直していない、というずれは珍しくありません。どちらが正しいかは人事の担当者が決め、Geminiに伝えます。
具体例1:育児と介護の休業制度について、社員向けFAQを作る
従業員400名ほどの会社で、人事に同じ質問が繰り返し届いている状況を想定します。育児・介護休業規程と休暇申請の手順書を参照させた状態から、質問の洗い出しに入ります。
先ほど確認した規程と手順書をもとに、社員が人事に問い合わせてきそうな質問を
洗い出してください。回答はまだ書かないでください。
条件
- 社員が実際に使う言葉で書く。「所定労働時間の短縮措置」のような
規程の言い回しではなく、「時短勤務にできますか」のように書く
- 妊娠が分かった時点、産前産後、育児休業中、復職前後、
家族の介護が必要になった時点の5つの場面に分け、それぞれ5問以上
- 各質問に、規程または手順書のどこに答えが書かれているかを、
条番号または見出し名で添える
- 規程と手順書のどちらにも答えが書かれていない質問には「規程になし」と記す
場面で区切るのは、社員が制度名を知らないまま問い合わせてくるからです。社員が知っているのは自分の状況だけで、それが規程のどの制度に当たるかは分かっていません。場面ごとに質問を並べると、FAQを読む側も自分の状況から探せます。
「規程になし」が付いた質問が、人事が答えを決めなければならない項目です。社内FAQでは、この種の質問が顧客向けより多く出ます。規程には書かれていないが運用で決まっている取り扱いが、担当者の頭の中にしかないためです。
質問を絞り込んだら、回答を書かせます。
絞り込んだ22問について、回答を作成してください。
【根拠の扱い】
- 参照した規程と手順書に書かれていることだけで回答してください
- 法律の一般的な内容や、他社の制度を持ち込まないでください
- 規程から答えが決まらない質問は、回答を書かずに「人事確認」と記し、
何が決まれば回答できるかを1行で書いてください
【出力の形】
表で出力してください。列は次の4つです。
| 質問 | 回答 | 根拠の条番号 | 条文の引用 |
- 条文の引用には、その条の該当部分を一字も変えずに写してください
- 引用は原文から連続した1文または2文とし、要約しないでください
- 引用できる条文がない回答は、回答欄を空にして「人事確認」とする
【回答の書き方】
- 150字以内。です・ます体
- 社員が次に何をすればよいかが分かるよう、提出先と様式名を含める
- 日数や期限は、条文に書かれた数値をそのまま使う
- 「原則として」「場合により」のような、判断を読み手に委ねる表現は使わない
条文の引用を要約させないのが、社内FAQでは特に効きます。規程の条文は、ただし書きや例外の部分にこそ条件が書かれています。要約されると、そのただし書きが消えます。「入社6か月未満の社員を除く」という一文が落ちた回答を読んだ新入社員が申請し、人事が断る、という事故はこうして起きます。
具体例2:Gmailに届いた問い合わせから、実際の質問を拾う
規程から作った質問は、人事の側が想定したものにすぎません。実際に社員が何を聞いているかは、受信トレイに残っています。Gmailの中のGeminiを使うと、その傾向を整理できます。
個人情報の扱いを先に決めておきます。人事に届くメールには、氏名や社員番号だけでなく、家族の病気、収入、休職の事情といった内容が含まれます。質問の傾向をつかむのに必要なのは聞かれている内容だけなので、整理の指示でそこを切り離します。
「制度問い合わせ」のラベルが付いた、直近1年のメールを確認してください。
そこから、社員がどんなことを人事に尋ねているかを整理してください。
条件
- 氏名、社員番号、所属部署、個別の家庭の事情は一切出力しないでください
- 聞かれている内容だけを、質問の形に書き直してください
- 言い回しが違っても同じことを聞いているものは1つにまとめ、
まとめた件数を添えてください
- 件数の多い順に並べてください
- 同じ人が何度もやりとりしている場合は、最初に何を聞いていたかを1行で
- 回答は書かないでください
最初に何を聞いていたかを出させる指示は、やりとりが長引いた問い合わせを見つけるためです。1通で終わった質問はFAQ向きですが、5通も往復した質問は、制度の説明そのものが分かりにくいという合図です。そうした質問は、FAQに1問足すだけでなく、規程の説明資料を作り直すきっかけになります。
出力を確認するとき、指示したのに個人が特定できる記述が残っていないかは人の目で見てください。部署名や役職と時期が組み合わさると、社内では誰のことか分かってしまいます。
整理した質問と、規程から作った質問を突き合わせます。両方にあるものから先に整備し、メールにしかないものは規程に書かれていない運用上の質問として、担当者に答えを確認します。
同じ作業を他のツールで進めるときの違いは、ChatGPTでFAQを作る手順とClaudeでFAQを作る手順にまとめています。
規程にない回答を、公開前に見つける
Geminiに点検させて、人が読む前に候補を絞ります。
先ほど作成したFAQの表を、あなた自身で点検してください。
次に当てはまる行を、理由つきで挙げてください。
1. 条文の引用が空欄の行
2. 添えられた条番号が、最初に確認した見出し一覧に存在しない行
3. 引用した条文には書かれていない日数、期限、金額、割合が
回答に登場している行
4. 引用した条文に「ただし」「〜を除く」という除外の記述があるのに、
回答がその除外に触れていない行
5. 規程にも手順書にも出てこない様式名、部署名、システム名が
回答に出てくる行
該当する行の番号と、どこが問題かだけを挙げてください。修正はしないでください。
4番目の指示が、規程を扱うときに効きます。条文の除外規定は短く、回答をまとめる過程で落ちやすい部分です。落ちたまま公開すると、対象外の社員が申請し、断られて不満だけが残ります。
この点検を通った後に、人が読みます。人事の担当者が全件を読むべきなのは、日数と期限を含む回答、給与や手当の扱いに触れる回答、対象者の条件を述べた回答の3つです。この3つ以外の、提出先や様式の案内といった回答は、実際の申請の流れと合っているかを見れば足ります。職種ごとの進め方は人事のFAQをAIで作る方法と総務のFAQをAIで作る方法で扱っています。
人事の担当者が承認してから掲載する
社内FAQでも承認の記録は残します。制度に関する回答は、後から「いつからこの取り扱いになったのか」を問われるためです。
質問ごとに、誰が、いつ、どの版の規程をもとに承認したかを1行で記録します。承認を依頼するときは、条文の引用の列を残した表をそのまま渡します。承認する側は規程を開き直さずに済み、引用と条文が合っているかだけを見ればよくなります。
掲載先を社内ポータルやGoogleサイトにするなら、Geminiの回答をGoogleドキュメントに書き出してから整えます。書き出すと見出しと表の形が残るため、承認の過程で使った条文の引用の列を消し、社員向けの列だけにしてから掲載します。引用の列は削除せず、担当者だけが見られる別の文書に残しておくと、次の改定のときに確認が早く終わります。
規程が改定されたら、影響する質問を洗い出す作業もGeminiに頼めます。
改定後の育児・介護休業規程と、現在公開している社内FAQの両方を確認してください。
現在のFAQの各回答について、次を判定してください。
1. 根拠の条番号が、改定後も同じ内容を定めているか
2. 条番号が振り直された場合、新しい条番号は何番か
3. 条文の内容が変わり、回答の書き換えが必要な行はどれか
4. 改定で新しく加わった条があり、FAQに質問を足すべき論点はあるか
判定の結果を表で出し、回答の書き換えはしないでください。
うまくいかないときの対処
古い版の規程を読んでしまう。 ファイル名のあいまいな指定で起きます。読み込んだファイル名と施行日を先に出させる手順を省かないでください。規程を1つのフォルダにまとめ、旧版は別のフォルダへ移しておくと混入が減ります。
共有ドライブの規程が見つからないと言われる。 閲覧の権限しかないファイルや、共有ドライブにあるファイルは参照できないことがあります。その文書だけアップロードするか、本文を貼り付けて渡します。
回答が規程の言い回しのままで、社員に伝わらない。 条文をそのまま写すと起きます。「条文の言葉をそのまま使わず、制度を知らない社員に説明する言い方へ書き直してください。ただし日数、期限、対象者の条件は条文の表現を変えないでください」と、書き換えてよい範囲を分けて指示します。
引用が要約になる。 「一字も変えずに」と書いても、長い条文では要約されます。「引用は原文から連続した1文を、句読点も含めて写してください」と引用の単位を指定し直します。
やりとりが長くなると、条番号を添える指示が守られなくなる。 5問ずつに区切って作らせ、区切りごとに根拠の条件を短く書き添えます。それでも崩れるなら、確定した分を持って新しい会話を始めるほうが早く終わります。
まとめ
人事や総務に今月届いた問い合わせを10件ほど手元に集め、それに答えられる規程がドライブのどこにあるかを確かめるところから始めてください。Geminiに読み込んだファイル名と施行日を出させ、質問を場面ごとに洗い出し、条番号と条文の引用を添えた表で回答を作らせます。引用が空欄の行が、人事が答えを決めるべき項目です。一度使った根拠の指示文と点検の指示文はドキュメントに保存しておくと、次の規程のFAQでは参照するファイル名を差し替えるだけで同じ進め方ができます。
よくある質問
Geminiは就業規則などGoogleドライブにある規程を直接読んでFAQを作れますか?
ドライブとの連携が有効なアカウントでは、ファイル名を挙げて参照させ、その内容からFAQを作れます。連携が使えない場合でも、規程をアップロードするか本文を貼り付ければ同じ手順で進められます。参照させたつもりのファイルが古い版であることがあるため、最初に読み込んだファイル名と最終更新日を答えさせてください。
Geminiが作った社内FAQの回答が規程どおりか、どう確かめればよいですか?
回答ごとに条番号と条文の引用を添えさせます。引用が付かない回答は、規程に書かれていない内容をGeminiが補ったものです。引用が付いた回答も、条文が述べている条件と回答の条件がずれていないかを、人事の担当者が原文と見比べて確かめます。
社員から届いた問い合わせメールをGeminiに読ませてもよいですか?
氏名、社員番号、所属、個別の事情が書かれた部分を削ってから渡してください。質問の傾向をつかむのに必要なのは聞かれている内容だけです。人事に寄せられるメールには家族の病気や収入の話が含まれることがあり、これらは本人の同意なく他へ回せません。自社の生成AI利用ルールを先に確認してください。