Geminiでアイデア出しの壁打ちをする手順:採用広報の案を練る
この記事の要点
Geminiでアイデア出しの壁打ちをするには、ドライブの振り返り資料とGmailのやりとりを先に読ませ、やり尽くした手を除いてから発想を広げます。エンジニア採用の広報企画を例に、絞り込みと反論のプロンプト、検証の手順を解説します。
結論
Geminiでアイデア出しの壁打ちをするなら、いきなり案を求めず、ドライブにある過去の振り返り資料とGmailのやりとりを先に読ませます。すでにやった手と効かなかった手を除いたうえで、視点と制約を変えながら案を出させ、評価軸で絞り、反論させて弱点を潰す流れです。素材がGoogleの中にそろっていれば、企画のたたき台までは目安として40分で届きます。
案を出させる前にそろえる材料
採用広報の企画で使えない案が出てくるのは、Geminiが自社の採用の歴史を知らないからです。去年の合同説明会が不発だったことも、技術ブログが3本で止まっていることも、社員インタビューの公開を現場に断られた経緯も、資料の中にあります。
Geminiの強みは、その資料を手元に集め直さずに参照できる点にあります。どこに何があるかを整理してから始めます。
| 素材 | 置き場所 | 壁打ちでの使いどころ |
|---|---|---|
| 昨年の採用活動の振り返り資料 | ドライブの採用フォルダ | やり尽くした手を除外する条件として使う |
| 内定辞退者と不合格者のアンケート | ドライブの表計算ファイル | 候補者が実際に何を見て何を感じたかの材料にする |
| 社員インタビューの原稿や下書き | ドライブのドキュメント | 自社の言葉で語れる中身を拾う |
| 人材紹介会社とのやりとり | Gmail | 市場での自社の見られ方を知る |
プランや時期によって使える機能が異なるため、最新の仕様は公式情報で確認してください。会社のアカウントでは、管理者が連携を止めていることもあります。連携が使えない場合は、資料をアップロードするか本文を貼り付ければ、以降の手順はそのまま使えます。
Geminiでアイデア出しの壁打ちをする手順
従業員150人のソフトウェア会社で、エンジニアの中途採用に応募が集まらないという状況を例に進めます。人事は2人、採用広報にかけられる費用は年間で数十万円、社内に専任の書き手はいません。
- 過去の資料とメールを読ませ、やったことと結果を一覧にさせる
- 候補者から見た自社の弱点を先に言わせる
- 視点と制約を変えながら、向きの違う企画を出させる
- 自分で決めた評価軸で採点させ、3案に絞る
- 残った案に反対させ、稟議で聞かれることを先に潰す
段階1と2を飛ばすと、技術ブログを書く、勉強会を開く、社員インタビューを載せる、という毎年どこかで見た一覧が返ってきます。
具体例1:やり尽くした手を除いてから、企画を出させる
過去の実績を読ませる
最初の指示で案を求めないことが、このあとのやり取りの質を決めます。
Googleドライブとメールの内容を確認してください。この回では企画を提案しないでください。
- ドライブの「採用」フォルダにある、昨年度の採用活動の振り返り資料
- 同じフォルダにある、内定辞退者アンケートの集計ファイル
- Gmailで、人材紹介会社の担当者とやりとりした直近1年のメール
確認できたら、次を答えてください。
1. 昨年度に実施した採用広報の取り組みの一覧。
それぞれ、かけた費用と期間、資料に書かれている結果を添える
2. 資料の中で、効果がなかった、続かなかったと書かれている取り組み
3. 内定辞退者が辞退の理由として挙げた内容を、多い順に5つ
4. 人材紹介会社の担当者が、当社の求人について指摘している点
5. 読み込んだファイル名とメールの件名の一覧
5番目を必ず入れてください。ドライブの検索は、一昨年の振り返り資料や、新卒採用の資料を拾うことがあります。一覧を見て違うものが混ざっていたら、ファイル名を指定し直します。
4番目の指摘が、社内の資料には残らない情報です。人材紹介会社は候補者の反応を直接聞いているので、「給与の幅が広すぎて社内の等級が読めない」「使っている技術の記載が3年前のまま」といった具体的な指摘がメールに書かれています。これが企画の出発点になります。
候補者から見た弱点を言わせる
企画を考える前に、何を直すべきなのかをはっきりさせます。
いま読んだ内容をもとに、転職を考えているエンジニアの立場になってください。
当社の求人票、採用サイト、技術ブログを見た人が、
応募をためらう理由を8つ挙げてください。
それぞれについて、次を添えてください。
・そう感じる根拠が、読んだ資料やメールのどこにあるか
・資料からは読み取れず、あなたが推し量った内容なら、推定と明記する
8つのうち、採用広報で変えられるものと、
処遇や働き方そのものを変えないと解決しないものに分けてください。
分けさせるのが効きます。給与水準や出社の頻度は採用広報で覆せません。そこに企画を当てても効果は出ないので、人事の手で変えられる範囲に絞ります。分けられた結果は、そのまま上司への説明材料にもなります。
視点と制約を変えて企画を出させる
採用広報で変えられると分けた課題のうち、上位3つに対する企画を出してください。
次の4つの立場になりきって、それぞれ4案ずつ、合計12案です。
1. 転職を迷っているエンジニア本人
2. 当社の現場のエンジニア。取材や執筆に時間を取られたくないと思っている
3. 採用広報に予算をつける立場の役員
4. 競合の人事担当。当社の弱点を突いて採用している立場から
各案には次を書いてください。
・案の名前を10字以内
・やること2行
・社内の誰の協力が何時間必要か
・かかる費用の見当
昨年度の一覧に載っている取り組みと、その焼き直しは出さないでください。
現場のエンジニアの立場を入れているのは、採用広報の企画が社内で止まる原因がそこにあるためです。取材に3時間かかる企画は、忙しい時期に必ず後回しになります。立場を指定すると、書き手の負担を減らす形の案が混ざってきます。
人事の現場でアイデア出しにAIを使う進め方は、人事のアイデア出し・壁打ちにAIを使う方法でも整理しています。
発想の幅を変える指示の型
12案が似通っていると感じたら、条件を1つずつ変えて出し直します。変える場所によって、返ってくる案の傾向が違います。
| 変える条件 | 指示の書き方 | 出てくる案の傾向 |
|---|---|---|
| 書き手 | 人事が書かず、現場のエンジニアが15分で作れる形で | 動画や短い投稿など、手間の軽い案が出る |
| 対象 | 転職活動中の人ではなく、3年後に動く人に向けて | 継続的な接点づくりの案が出る |
| 禁止する手 | 文章を書かない企画だけで | 場づくりや人づての案が出る |
| 逆から考える | 応募したい気持ちを削ぐために当社が今やっていることを10個 | 直すべき箇所が一覧になる |
最後の型は、企画を出すというより現状の点検です。「求人票の必須要件が12項目ある」「採用サイトの社員紹介が全員役職者」といった項目が並び、費用のかからない改善の一覧がそのまま手に入ります。
出た企画を評価軸で3案に絞る
案が20を超えたら、自分で決めた軸で採点させます。Geminiに選ばせるのではなく、判断の材料を表にさせるのが目的です。
ここまでに出た企画を、次の4つの軸で5段階に採点し、表にしてください。
列は、案の名前、現場負担、費用、候補者への効き目、続けやすさ、合計点、一言の理由です。
・現場負担:5は現場のエンジニアの時間が月1時間以内、1は月8時間以上
・費用:5は追加費用なし、1は年間50万円を超える
・候補者への効き目:5は辞退理由の上位3つに直接効く、1は間接的
・続けやすさ:5は人事2人で1年続けられる、1は3か月で息切れする
合計点の高い順に並べてください。
あわせて、次も答えてください。
・今週から手をつけられる案はどれか
・費用か人手が増えれば有力になる案と、必要な条件
続けやすさを軸に入れているのは、採用広報が続かないと意味をなさないためです。月に1本の更新を1年続けられるかどうかで、企画の形は変わります。
採点の数字は目安として扱ってください。Geminiは自社の現場の忙しさを知らないので、現場負担の見当は外れます。読むべきなのは点数より一言の理由で、理由が自分の感覚とずれていたら前提の伝え方に問題があります。
企画に反対させて、稟議で聞かれることを先に潰す
3案に絞ったら、推したい案をGeminiに攻めさせます。
次の企画案に反対の立場で検討してください。賛成意見はいりません。
【企画案】
現場のエンジニア6人に持ち回りで、月1本、業務で使っている技術の
選定理由を700字で書いてもらい、採用サイトに掲載する。
人事が構成案と質問を用意し、執筆は1人あたり1時間以内に収める。
次の順で答えてください。
1. この企画が3か月で止まるとしたら、その理由を3つ。それぞれ止まる前の兆候を添える
2. この企画が前提にしている、そうであってほしい思い込みを3つ
3. 現場のエンジニアが執筆を断るときの言い分を3つ
4. 稟議でこの企画に反対する役員が突いてくる点を3つと、それぞれへの答え方
5. 費用と手間に見合わないと判断してやめるべき条件を1つ
2番目が要です。「構成案があれば1時間で書ける」「現場は技術のことなら書きたがる」といった前提が並びます。どれも確かめていない仮定で、崩れれば企画も崩れます。4番目の答え方は、そのまま稟議資料の想定問答に使えますが、数字を含む答えは自分で裏を取ってから使ってください。
反論を読んだら、同じ会話で案を組み直させます。「いま挙げた止まる理由と思い込みを踏まえて企画を作り直してください。最初の1か月で試す小さな形と、断られた場合の代わりの手段も書いてください」と続けます。6人に持ち回りで頼む案が通らなくても、話を聞いて人事が書き起こす形なら動き出せます。
具体例2:企画メモのドキュメントの中で往復する
企画が形になってきたら、Googleドキュメントに移します。Geminiの回答はドキュメントに書き出せるので、見出しと表を保ったまま企画メモにできます。
このあとが、Geminiを使う利点の出るところです。ドキュメントを開いたままGeminiを呼び出せば、いま書いている文書を対象にやり取りできます。チャットに全文を貼り直す必要がありません。
この企画メモを読んで、次の作業をしてください。
1. 「実施内容」の章に書いた手順のうち、
誰が担当するかが書かれていない作業を挙げてください
2. この企画を、採用予算を持つ役員が読んだときに、
最初に尋ねる質問を3つ挙げてください
3. メモの中で、社内の実績や数字を根拠にしている記述と、
根拠なく書かれている記述を分けて一覧にしてください
3番目の一覧が、提出前の点検表になります。自分で書いた文章でも、企画を練るうちに「応募が2倍になる」といった裏づけのない見込みが紛れ込みます。Geminiに指摘させ、根拠のない記述は消すか、検証する項目として書き直します。
書き出した企画メモは自分のドライブに作られます。上司や現場に共有する前に、共有の設定を確認してください。
企画書にする前に確かめること
Geminiが出した案は、社内の事実で裏づけられていません。企画書に移す前に、自分で確かめます。
- 企画が根拠にしている辞退理由が、アンケートの原文にそう書かれているかを開いて確かめる
- 現場の協力にかかる時間を、実際に現場の誰かに聞く。Geminiの見当は当てにしない
- 費用の見当を、過去の発注実績か見積もりで置き換える
- 昨年度に似た取り組みがなかったかを、振り返り資料でもう一度確かめる
2番が最も外れます。Geminiは「1本1時間」と書きますが、書き慣れていない人が700字を書くには、構成を考える時間を含めて3時間かかることもあります。企画の実現性はここで決まるので、現場の1人に試しに書いてもらってから本数を決めるほうが確実です。
内定辞退者のアンケートや人材紹介会社とのメールには、個人名や他社の情報が含まれます。参照してよい範囲は自社の生成AI利用ルールと個人情報の取り扱い方針で決まるので、判断に迷う資料は人事の責任者に先に確認してください。Geminiの出力は下書きであり、公開する文章や社外に出す資料は人が読んで確かめます。
うまくいかないときの対処
| 起きること | 対処 |
|---|---|
| 去年やった取り組みが案として出てくる | 振り返り資料を読ませた一覧を貼り直し、「この一覧に載っているものと、その焼き直しは除外してください」と条件を書き添える |
| 別の年度や新卒採用の資料が混ざる | フォルダ名と年度をファイル名まで含めて指定し、読み込んだファイル名の一覧を毎回出させる |
| 案がどれも一般論で、自社の話になっていない | 辞退理由やメールの指摘を引用させる条件をつける。引用できない案は出さないよう指示する |
| 反論を頼んでも当たり障りのない懸念しか出ない | 反対する人の立場を指定する。役員、現場のリーダー、競合の人事など、誰が何を守りたいのかまで書く |
| やり取りの後半で最初の制約が守られなくなる | 費用と現場負担の上限を、指示のたびに1行で書き添える。崩れたら最新の案だけ持って新しい会話で続ける |
他のツールで同じテーマを壁打ちすると、素材の置き場所の違いから別の切り口が出ます。ChatGPTでアイデア出しの壁打ち手順、Claudeでアイデア出しの壁打ちをする手順、Copilotでアイデア出しの壁打ちをする手順にそれぞれの進め方をまとめています。
まとめ
昨年度の採用活動の振り返り資料がドライブのどこにあるかを確かめ、内定辞退者のアンケートと人材紹介会社とのメールを合わせてGeminiに読ませるところから始めてください。読んだファイルの一覧を出させ、候補者がためらう理由を8つ挙げさせ、採用広報で変えられるものだけに企画を当てます。4つの立場で案を出させ、現場負担と続けやすさを含む軸で採点させ、残った案には反対の立場を取らせます。形になったらGoogleドキュメントに書き出し、根拠のある記述とない記述を分けさせてから、現場の1人に協力の時間を聞きに行ってください。
よくある質問
Geminiはドライブにある過去の資料を読んだうえでアイデアを出せますか?
GoogleドライブやGmailとの連携が有効なアカウントでは、フォルダ名やファイル名を挙げて内容を参照させ、それを踏まえた案を出させられます。連携が使えない環境でも、資料をアップロードするか本文を貼り付ければ同じ進め方ができます。
Geminiが出した企画をそのまま上司に提出してもよいですか?
提出できる形にはなっていません。案の前提になっている事実が社内の実績と合っているか、予算と人員で実行できるかを人が確かめる必要があります。応募数や辞退率などの数字が案に書かれていたら、それは推測なので必ず元データと照らしてください。
採用広報のアイデア出しで、応募者のアンケートをGeminiに読ませてもよいですか?
個人が特定できる情報の扱いは自社の生成AI利用ルールと個人情報の取り扱い方針で決まります。氏名や連絡先、所属企業名を消したうえで自由記述だけを渡す形が扱いやすく、判断に迷う資料は人事の責任者か情報システム部門に先に相談してください。