ChatGPTでアイデア出しの壁打ち手順:解約を防ぐ施策を絞る
この記事の要点
ChatGPTでアイデア出しの壁打ちをするには、前提を渡してから役割と制約を変えて発想を広げ、評価軸で絞り、出た案に反論させます。解約を防ぐ施策づくりを例に、そのまま使えるプロンプトと、企画書にする前の検証手順を解説します。
結論
ChatGPTをアイデア出しの相手にするなら、1回の指示で数を出させるのをやめ、5回のやり取りに分けます。前提を渡して認識を合わせ、役割と制約を変えて発想を広げ、自分で決めた評価軸で絞り、残った案に反論させ、そのうえで作り直させる流れです。数だけ並んだ一覧は企画書に載せられませんが、この順で進めると、上司に説明できる理由がついた案が3つほど残ります。初稿までは目安として30分です。
ChatGPTのアイデアがありきたりになる理由
「解約を減らすアイデアを20個出してください」と頼むと、定期的なフォロー連絡、利用状況の可視化、ユーザー会の開催といった案が並びます。担当者なら全部知っている案です。ChatGPTは自社の顧客も、過去にやって手応えがなかった施策も、来期の予算も知らないので、どの会社にも当てはまる案に落ち着きます。
同僚に相談するときも、いきなり「何かいい案ない」とは言わず状況の説明から入ります。ChatGPTでも同じで、最初のやり取りはアイデアを求めずに前提を渡すことに使います。出てきた案が使えないときは、だいたい次の3つに当てはまります。
| 出力の状態 | 起きている原因 | 対処 |
|---|---|---|
| どの会社にも当てはまる一般論が並ぶ | 顧客像と制約を渡していない | 顧客の属性、予算、期間、担当者の人数を数字で伝える |
| すでに実施した施策ばかり出てくる | 過去の取り組みを伝えていない | 試した施策と、その結果をやらない条件として渡す |
| 案が20個あるのに、どれも選べない | 評価軸を決めずに数だけ求めた | 自社の評価軸を先に決め、その軸で並べ替えさせる |
ChatGPTでアイデア出しの壁打ちをする手順
この記事では、法人向けのオンライン研修サービスを例に進めます。年単位の契約で、更新月に解約が集中しているという設定です。作業は5つの段階に分かれます。
- 前提を渡し、ChatGPTに状況を要約させて認識を合わせる
- 役割と制約を変えながら、向きの違うアイデアを出させる
- 自分で決めた評価軸で並べ替えさせ、候補を絞る
- 残った案に反論させ、弱点と失敗の条件を洗い出す
- 弱点を踏まえて案を作り直させ、検証の計画まで作る
段階1を省くと以降のやり取りがすべて浅くなり、逆にここさえ丁寧にやれば2回目以降の指示は短くて済みます。
プランや時期によって使える機能が異なるため、最新の仕様は公式情報で確認してください。ファイルの添付、長い文書を別画面で編集する機能、プロジェクトやカスタム指示による前提の固定は、契約内容によって使えない場合があります。
具体例1:解約が続くサービスで、引き止めの施策を出す
前提を渡して認識を合わせる
最初の指示では、アイデアを求めません。渡した情報をどう理解したかを答えさせ、ずれていたら直します。
これからアイデア出しの相談をします。この回では案を出さないでください。
【サービス】
法人向けのオンライン研修サービス。年間契約で、契約社数は約400社。
人事部門が契約し、実際に使うのは各部署の社員。
【困っていること】
契約の更新月に解約が集中する。
解約した会社は、契約から半年たったあたりで社員の受講率が落ちている。
解約の連絡は更新の1か月前に来るため、こちらから動く時間がない。
【使える条件】
担当はカスタマーサクセス1人で、他業務と兼任。予算は年間60万円。
施策は3か月で結果を見たい。開発部門への依頼は3か月では通らない。
【これまで試したこと】
・更新2か月前の電話フォロー。担当者につながらないことが多かった
・利用状況の月次レポートをメール送付。開封率が伸びなかった
まず、次の3点を答えてください。
1. この状況で解約が起きる流れを、あなたの理解で3段階に分けて説明してください
2. 私が渡した情報のうち、原因の特定に足りていない情報を3つ挙げてください
3. この相談で答えを出すべき問いを、1文にしてください
3番目の指示が効きます。自分では「解約を減らす施策」を考えているつもりでも、返ってくる問いを読むと「受講率が落ちる前に気づく方法」が本題だと気づくことがあります。問いがずれていれば、この時点で直せます。また、ChatGPTが「解約した会社と継続した会社で受講率の下がり方に差があるか」と尋ねてきたら、その数字は社内にあります。壁打ちを止めて先に調べたほうが早く進みます。
役割と制約を変えて発想の向きを変える
前提が固まったら、発散に移ります。1つのプロンプトで20個出させるより、条件を変えて5個ずつ4回出させたほうが、重ならない案が集まります。
先ほどの前提のもとで、アイデアを出してください。
次の4つの立場それぞれになりきって、5個ずつ提案してください。
合計20個です。立場ごとに見出しをつけてください。
1. 解約された側の営業担当。失注の理由を知っている立場から
2. 契約先の人事部長。社内で研修の予算を守らなければならない立場から
3. 実際に受講する現場の社員。研修を面倒だと思っている立場から
4. 予算がゼロの状態で、明日から1人で始める担当者の立場から
各案は次の形で書いてください。
・案の名前は10字以内
・やることを2行
・誰が動くか
・効くと考える理由を1行
すでに試した電話フォローと月次レポートの改良版は、案に含めないでください。
立場を変えると案の質が変わります。現場の社員の立場を指定すると、人事部門向けの施策ばかりだった一覧に「受講のハードルを下げる」方向の案が入ってきます。予算ゼロの立場を入れるのは、明日から動ける案を混ぜるためです。
発想をさらに遠くへ飛ばしたいときは、条件をもう一段変えます。
| 変える条件 | 指示の書き方 | 出てくる案の傾向 |
|---|---|---|
| 時間軸 | 3か月ではなく、来週から始められる案だけ | 準備のいらない小さな施策が出る |
| 禁止する手 | メールとオンライン会議を使わない案で | 対面や郵送など、別の接点の案が出る |
| 逆から考える | 解約を増やすために、こちらが今やってしまっていることを10個 | 自社の悪い習慣が言語化される |
| 他業界の型 | 定期購読の雑誌やスポーツジムの引き止め方を転用して | 業界の外から来た型が入る |
逆から考えさせる指示は、アイデア出しというより現状の点検に近い使い方です。「更新1か月前まで連絡しない」「レポートを送って読ませた気になっている」といった項目が並び、そのまま直すべきことの一覧になります。
出たアイデアを評価軸で絞り込ませる
20個の案が並んだ状態では、どれを企画書にすればよいかわかりません。ここでやるのは、ChatGPTに選ばせることではなく、自分で決めた評価軸で並べ替えさせることです。この例の軸は、3か月で結果が見えること、担当1人で回せること、予算に収まること、解約の原因に直接効くことの4つです。
先ほどの20個の案を、次の4つの軸で5段階に採点し、表にしてください。
表の列は、案の名前、3か月検証、1人運用、予算、原因への直結、合計点、一言の理由です。
【採点の基準】
・3か月検証:5は3か月で効果を判断できる、1は判断に1年かかる
・1人運用:5は兼任の担当者が週2時間以内で回せる、1は専任が必要
・予算:5は年間10万円以下、1は60万円を超える
・原因への直結:5は半年後の受講率の低下に直接効く、1は間接的
合計点の高い順に並べ、同点なら原因への直結が高いほうを上にしてください。
採点のあと、下位に沈んだ案のうち条件が変われば有力になる案と、
その条件も挙げてください。
下位の案を拾わせておくと、判断の材料が残ります。「開発の工数さえ取れれば一番効く」案が下位にあるなら、それは今期に捨てる案ではなく、来期の予算要求に回す案です。
採点の数字そのものは信用しすぎないでください。ChatGPTは自社の顧客を知らないので、予算や工数の見積もりは目安にすぎません。読むべきなのは順位ではなく、添えられた一言の理由です。理由が自分の感覚とずれていたら、前提の理解がずれています。
自分の案に反論させて弱点を先に見つける
絞り込んだ案をそのまま企画書にすると、会議で出た指摘に答えられません。企画を通す前に、ChatGPTに反対の立場を取らせます。
次の施策案について、反対の立場から検討してください。
私はこの案を推していますが、賛成意見はいりません。
【施策案】
契約から4か月目に、契約先の人事担当と現場の受講者の両方に
15分のオンライン面談を設定し、受講が止まっている部署を特定して
その部署向けの短い研修を追加で案内する。
次の順で答えてください。
1. この案が失敗するとしたら、どこで失敗するか。3つ挙げ、それぞれ失敗の兆候を添える
2. この案が前提にしている「そうであってほしい思い込み」を3つ、言葉にする
3. 契約先の人事担当が、この面談を断る理由を3つ
4. 社内の会議でこの案に反対する人が言いそうなことを3つと、それぞれへの答え方
5. 費用と手間の割に効果が薄いと判断すべき条件を1つ
2番目の思い込みを言葉にさせる指示が中心です。「面談を設定すれば相手は出てくれる」といった前提が並びます。どれも検証していない仮定で、そこが崩れれば施策全体が崩れます。5番目でやめる条件を書かせるのは、走り出した施策を止める判断が、始める判断より難しいからです。
反論を読んだら、同じ会話で案を作り直させます。
いま挙げてもらった失敗の要因と思い込みを踏まえ、施策案を作り直してください。
元の案を捨てる必要はありません。弱いところを補う形で組み直してください。
条件は前と同じで、3か月、担当1人、予算60万円以内です。
作り直した案について、次を書いてください。
・変更した点と、それが失敗の要因のどれに対応しているか
・面談を断られた場合の代わりの手段
・最初の2週間で試す小さな形
最後の指示は、企画を小さく始めるためのものです。400社すべてに面談を設定する案は通りませんが、解約しそうな20社に絞って試す案なら、その週から動けます。顧客接点の現場で壁打ちを回す進め方は、カスタマーサポートのアイデア出し・壁打ちにAIを使う方法でも扱っています。
具体例2:解約アンケートの自由記述を添付して、顧客の言葉から案を作る
ChatGPTにはファイルを添付できます。解約時のアンケートや問い合わせの記録があるなら、実際の顧客の言葉から案を作らせたほうが具体的になります。過去1年分の自由記述を表計算のファイルにまとめ、社名と担当者名を消したうえで添付します。
添付したのは、過去1年に解約した58社の解約時アンケートです。
自由記述の欄だけを抜き出しています。
次の順で進めてください。この回ではまだ施策を提案しないでください。
1. 解約の理由を5つから7つのまとまりに分類してください。
見出しには、私が考えた言葉ではなく、回答者が実際に使っている言葉を使ってください
2. 各まとまりについて、件数と、代表的な記述を3つそのまま引用してください
3. こちらの行動で変えられるものと、変えられないものに分けてください
4. 1件しかないが、放っておくと増えそうな記述があれば挙げてください
回答者の言葉を見出しに使わせるのが要点です。こちらが「活用が進まなかった」と分類すると、記述にあった「異動で担当がいなくなった」という事情が消えます。担当者の異動が原因なら、必要なのは受講率を上げる施策ではなく、担当が変わったときの引き継ぎの仕組みです。
分類が出たら、変えられると判定されたまとまりごとに案を出させます。このとき「各案には、そのまとまりに入っていた記述のどれに効くのかを引用つきで示してください。引用できない案は出さないでください」と条件をつけます。引用を義務づけると案の出どころがはっきりし、顧客が一度も言っていない課題に向けた施策が混ざるのを防げます。企画書に載せるときの根拠にもなります。
自由記述には、担当者の氏名や社名、社内の事情が書かれていることがあります。入力してよい情報の範囲は会社の生成AI利用ルールで決まるので、個人が特定できる部分を消してから添付し、判断に迷う資料は情報システム部門に先に相談してください。
案の一覧が長くなってきたら、長い文書を別画面で編集する機能に移します。チャットの中では修正を頼むたびに一覧が出力され直して追えなくなりますが、別画面なら1つの表を直し続けられます。
毎回同じ前提で壁打ちするには
アイデア出しを月に何度もやるなら、前提を毎回書くのは無駄です。ChatGPTには、関連する会話と資料をまとめておくプロジェクトと、回答の前提をあらかじめ書いておけるカスタム指示があります。指示欄には事業の前提に加えて、案には効くと考える理由と失敗する条件を添えること、効果の数字を推測で書かず検証項目として書くこと、の2行を入れておきます。どの会話でも同じ形の出力になり、それらしい数字が混ざるのも防げます。
アイデアを企画書に持っていく前にやること
ChatGPTが出した案は、事実で裏づけられていません。企画書に移す前に、自分で確かめる作業が要ります。
作り直した施策案について、企画を進める前に確かめるべきことを整理してください。
次の3つに分けて表にしてください。
1. 社内のデータで確かめられること。どのデータを、どう集計すれば確かめられるか
2. 顧客に聞かないとわからないこと。誰に、どんな聞き方をすればよいか
3. 小さく試してみないとわからないこと。何社で、何週間試せば判断できるか
表の列は、確かめること、確かめ方、必要な期間、これが外れた場合に案がどう変わるか、です。
根拠を示せない前提は、確かめることの欄に必ず入れてください。
この表ができたら、ChatGPTの出番はいったん終わります。この例なら、「契約から半年で受講率が落ちる」という前提が本当かどうかを、解約した会社と継続している会社で比べるところから始めます。比べたら差がなかった、ということも起こります。その場合は前提から立て直しますが、企画書を役員会に出した後で気づくよりはるかに軽い手戻りです。案の中に具体的な数値が書かれていたら、それは推測です。出力の確認は人が行ってください。
うまくいかないときの対処
同じような案ばかり出てくる。 条件を変えずに「もっと出して」と繰り返しています。立場、予算、期間、禁止する手段のどれか1つを変えて指示し直してください。それでも変わらなければ、会話を新しく始めて前提を渡し直します。長いやり取りの後半では、前に出た案に引きずられます。
案が抽象的で、何をするのかわからない。 「顧客との関係強化」のような案には、「実行する最初の1週間で、誰が誰に何をするかを時系列で書いてください」と尋ねます。書けない案は、実体のない案です。
採点が甘く、全部が高得点になる。 採点基準に数字を入れていないと起こります。「5は週2時間以内」のように各段階の意味を数字で定義し、「1点と2点の案をそれぞれ1つ以上出してください」と付け加えます。
反論が当たり障りのない懸念で終わる。 「懸念点を挙げてください」ではなく、「この案に予算を出す部長が、どこを突いて却下するか」のように、反対する人を具体的に指定します。役職と立場を与えるほど指摘が鋭くなります。
同じテーマを別のツールで試すと、違う切り口が出ます。Geminiでアイデア出しの壁打ちをする手順、Claudeでアイデア出しの壁打ちをする手順、Copilotでアイデア出しの壁打ちをする手順で、それぞれの進め方をまとめています。
まとめ
いま抱えている課題を1つ選び、ChatGPTを開く前に、顧客の状況、使える予算と期間、試して効かなかった施策の3つをメモに書き出してください。それを渡して問いを整理させ、立場を4つ変えて20個出させ、自分で決めた軸で採点させます。上位に残った案には反対の立場を取らせ、崩れた前提を補って作り直させます。確かめることの表を作らせたら、そこからは社内の数字と顧客への電話の仕事です。うまく進んだ会話の前提と決まりをプロジェクトの指示欄に移しておくと、次のテーマでは課題を1行書くだけで同じ深さの壁打ちが始められます。
よくある質問
ChatGPTにアイデアを出させても、ありきたりな案しか出てきません。どうすればよいですか?
前提を渡さずに数だけ求めているのが原因です。顧客の状況、使える予算と期間、すでに試して効かなかった施策を先に伝え、そのうえで役割や制約を変えて出し直させます。条件を1つ変えるたびに、別の方向の案が出てきます。
ChatGPTで出たアイデアは、そのまま企画書に使ってよいですか?
そのままは使えません。ChatGPTは自社の顧客データも売上の実態も知らないため、案の前提になっている事実が本当かどうかを、社内の数字や顧客の声で確かめる必要があります。出力は人が必ず確認してください。
アイデア出しの壁打ちは、何回くらいやり取りすればよいですか?
1回では終わりません。前提を渡す、発想を広げる、評価軸で絞る、反論させる、案を作り直す、という5往復を目安にしてください。往復ごとに別の指示を出すことで、最初の一覧には出てこなかった案が残ります。