弁護士のAI日次利用28%、統治は34%どまり
この記事の要点
法律専門家1,300人超の調査で、AIを毎日使う人が28%に達した一方、AI活用を正式に制度化した法律事務所は34%にとどまることがわかった。法務部門が今から備えるべき点を解説する。
法律専門家1,300人以上を対象にした調査で、AIを毎日使うと答えた人が28%、週に数回使うと答えた人が31%にのぼり、AIが実務の日常的な道具になっていることがわかりました。一方で、AIの活用を組織として正式に制度化した法律事務所は34%にとどまり、個人の利用が先行し、組織としての管理体制が追いついていない実態が浮かび上がっています。契約書や機密情報を扱う法務の現場でも、他業界と同じ構図が繰り返されています。
利用実態と生産性の変化
調査によると、法律専門家の69%が何らかの形でAIを使っており、うち28%は毎日、31%は週に数回の頻度で利用しています。AIを使う目的として最も多いのは、契約書のたたき台作成や判例の下調べといった、時間のかかる定型的な作業の効率化です。38%が週に1時間から5時間の作業時間を削減できたと回答しており、実務上の効果は具体的な数字として表れています。
組織としての導入は道半ば
一方で、AIの活用を組織として正式に制度化していると答えた法律事務所は34%にとどまりました。多くの事務所では、個々の弁護士やスタッフが自分の判断でAIツールを使い始めており、事務所全体としての利用ルールや責任の所在が定まっていないケースが目立ちます。背景には、AIガバナンスの責任を負う担当者を置いている事務所が少ないという事情があります。企業の法務部門がAI推進部門と連携する際の進め方は法務とAI推進の協働で解説しているので、社内での役割分担を検討する参考になる。
契約書チェックでの活用と注意点
法務の現場でAIが最も使われている場面の一つが、契約書の一次チェックです。条項の見落としがないかを確認したり、標準的な契約書との違いを洗い出したりする作業にAIを使うことで、確認にかかる時間を大きく短縮できます。ただし、AIによる契約書チェックはあくまで一次確認の補助であり、最終判断は必ず人が行う必要があります。具体的な活用方法と注意点は契約書チェックをAIで補助する方法にまとめています。
米国の規制動向
米国では47の州が、弁護士のAI利用に関する何らかの倫理指針を整備しています。全米法曹協会が示した基本原則では、専門知識としての適正さ、秘密保持、依頼者への説明、報酬の妥当性、裁判所への誠実さ、監督責任という6つの義務が、AIを使う場面でも変わらず求められるとされています。医療分野でも州レベルの規制が相次いでおり、イリノイ州のAI安全法のように、業界を問わずAI利用への規制が具体化しつつある流れと軌を一にしています。
なぜ組織としての制度化が遅れるのか
法律事務所でAIの組織的な導入が遅れている背景には、秘密保持や職業倫理といった法律業務特有の慎重さがあります。依頼者の秘密情報をAIツールに入力してよいかどうかの判断は、一般的な業務効率化のツール導入とは異なる重みを持ちます。個々の弁護士が自分の判断で使い始める一方、事務所として統一したルールを作るには、技術面だけでなく職業倫理の観点からの検討も必要になり、時間がかかりやすい構造があります。この慎重さ自体は誤りではありませんが、個人利用が先行したまま放置すれば、事務所としての管理が及ばない範囲が広がり続けることになります。
現場の実務にどう効くか
一般企業の法務部門にとっても、この調査結果は他人事ではありません。取引先の法律事務所がAIをどう使い、どう管理しているかは、契約交渉や秘密情報のやり取りに直接関わってきます。契約書のドラフトをAIで作成した法律事務所とやり取りする際は、機密保持契約の範囲でAIツールの利用がどう扱われているかを確認しておくとよい。自社の法務部門でAIを導入する場合も、個人の判断に任せるのではなく、利用してよい業務の範囲と、誰が最終確認を行うかをあらかじめ定めておくことが、後々のトラブルを防ぐ土台になります。法務分野でのAI活用の全体像は法務部門のAI活用と注意点で整理しているので、導入前の確認に役立ててほしい。
出典
よくある質問
法律事務所以外の一般企業の法務部門にも関係する話ですか。
はい。取引先の法律事務所がAIをどう使い、どう管理しているかは、契約書のやり取りや秘密情報の扱いに直接関わります。自社の法務部門がAIを使う際の参考にもなる調査結果です。
個人が使うAIと組織として導入するAIの違いは何ですか。
個人が業務の合間に使うAIは手軽に始められますが、利用範囲や責任の所在が曖昧になりがちです。組織として正式に導入する場合は、利用してよい業務の範囲や確認手順を定め、誰が責任を持つかを明確にする必要がある。