ChatGPTで研修の理解度テストを作る手順:教材の範囲で出題する
この記事の要点
ChatGPTで研修の理解度テストを作るには、教材を添付して出題範囲を縛り、各設問に根拠の見出しを書かせます。情報セキュリティ研修を例に、難易度をそろえるプロンプト、配布前の確認手順、正解率が低かった設問の直し方を解説します。
結論
ChatGPTで研修の理解度テストを作るときは、教材そのものを添付し、この資料に書かれている内容だけから出題するよう範囲を縛ったうえで、各設問に根拠となる見出し名を書かせます。四択10問の初稿なら、目安として15分ほどで手元に届きます。出てきた設問は教材と一問ずつ突き合わせ、正解の設定と出題範囲を担当者が確かめてから配ります。
理解度テストのどこをChatGPTに任せるか
研修テストでもっとも避けたいのは、教材に載っていないことが正解になっている状態です。受講者は教材を読んで臨んでいるので、答えられない設問が並ぶと、研修そのものが「聞いていない話を問う場」だと受け取られます。一度そう思われると、翌年の受講態度まで変わります。任せる範囲はここを基準に切ります。
| ChatGPTに任せる | 人が決めること |
|---|---|
| 教材から出題候補になる論点を洗い出す | どの論点を修了の条件にするか |
| 設問文と選択肢の文案を作る | 正解が教材のどこに書いてあるかの確認 |
| 選択肢の長さと文体をそろえる | 現場の実務と食い違う選択肢を落とす |
| 難易度の内訳を指定どおりに割り振る | 難易度の定義そのもの |
| 正解率が低かった設問の書き直し案を出す | 設問が悪いのか、教材が薄いのかの判断 |
この記事では、従業員300名ほどの会社で全社員向けの情報セキュリティ研修を年1回実施している場面を例にします。教材はスライド40枚を書き出したPDFと、社内の情報取扱規程の抜粋です。受講後に10問のテストを実施し、正解率7割を修了の目安にしています。
教材を渡す前に決める3つのこと
出題範囲を、章の単位で書き出します。スライド40枚のうち、パスワードの扱いと持ち出しの申請手順は全員に問う、標的型メールの見分け方は問う、暗号化の技術的な仕組みは問わない、といった線です。この線を自分で引かないまま渡すと、ChatGPTは教材全体から均等に拾おうとして、実務で使わない知識まで出題します。
到達してほしい行動も決めます。「情報セキュリティを理解する」では設問が作れません。「社外にファイルを持ち出すとき、申請が必要な場合と不要な場合を判別できる」まで落とすと、設問の形が自動的に決まります。
設問形式は四択を中心に据え、正誤判定を補助として混ぜます。記述式は採点に人手がかかるので、全社員向けの年次研修では2問までに抑えます。
教材そのものに社内の設備名や取引先名が載っているときは、自社の生成AI利用ルールに従ってください。判断がつかないときは、固有名詞をA社、B部門のような記号に置き換えたファイルを作れば、出題の材料としては足ります。
前提をプロジェクトに置いて毎回の説明を省く
ChatGPTには会話をまとめておくプロジェクトという入れ物と、すべての会話に効くカスタム指示があります。研修テストのように毎年同じ作業を繰り返す仕事では、研修ごとのプロジェクトを作り、教材と前提をそこに置くほうが混ざりません。プランや時期によって使える機能が異なるため、最新の仕様は公式情報で確認してください。
このプロジェクトは、全社員向け情報セキュリティ研修の理解度テストを作るためのものです。
以下を前提として、すべての回答で守ってください。
【研修】
・対象は全社員300名。IT部門以外の社員が9割を占める
・受講形式は録画視聴。視聴後に10問のテストを実施する
・修了の目安は正解率7割
・教材は添付したスライド書き起こしと、情報取扱規程の抜粋のみ
【必ず守ること】
・添付した教材に書かれていない内容からは出題しない
・一般的なセキュリティ知識で補完しない
・各設問に、正解の根拠となる教材の見出し名と、その箇所の本文を1文引用する
・根拠を引用できない設問は作らず、作れない理由を書く
・専門用語を使うときは、教材で使われている表現をそのまま使う
根拠の引用を義務づける指示が効きます。範囲を縛るだけの指示は、会話が長くなると崩れます。引用を求めておくと、ChatGPTが補った知識から作った設問は引用欄が空になるか、教材にない文言が入るので、一目で見分けられます。
具体例1:情報セキュリティ研修の四択を作る
教材のファイルを添付したうえで、出題の条件を渡します。
添付した教材から、理解度テストの四択問題を10問作ってください。
【出題範囲と問題数】
・パスワードの設定と管理 … 3問
・社外へのファイル持ち出しと申請手順 … 3問
・標的型メールの見分け方と報告先 … 3問
・私物端末の業務利用 … 1問
【設問の条件】
・設問文は60字以内。二重否定を使わない
・選択肢は4つ。文字数の差が最大でも1.5倍に収まるようにそろえる
・正解の選択肢だけが長い、または短い状態にしない
・正解の位置を1から4に散らし、同じ番号が3問続かないようにする
・誤答の選択肢は、教材の別の箇所に出てくる用語や手順を使って作る
・言葉遊びや例外事例を使ったひっかけは作らない
・「常に」「絶対に」「一切」のような極端な語を選択肢に入れない
【各設問に添えるもの】
1. 正解の番号
2. 根拠 … 教材の見出し名と、その箇所の本文1文
3. 誤答それぞれが、なぜ誤りなのかの1行説明
4. この設問で確かめたい行動
誤答を教材の別の箇所から作らせる指示には理由があります。教材と無関係な選択肢は、読んだ瞬間に消せてしまい、実質二択になります。教材の中に出てくる別の手順を誤答に置くと、教材を読み込んだ人だけが区別できる設問になり、ひっかけにもなりません。
極端な語を禁じるのも同じ狙いです。「常に」「一切」が入った選択肢は、内容を読まなくても誤りだと推測されます。試験のテクニックで解けてしまう設問は、理解度を測れません。
具体例2:難易度を定義してから割り振らせる
難易度は、こちらが定義を渡さない限りそろいません。ChatGPTに「易しい問題と難しい問題を混ぜて」とだけ伝えると、難しい側が細かい数値の暗記に寄ります。
先ほどの10問を、次の定義に従って難易度別に作り直してください。
【難易度の定義】
A … 教材を一度視聴すれば答えられる。手順の名称、報告先、申請の要否
B … 教材の内容を自分の業務に当てはめて考える。具体的な場面を設問文で示す
C … 教材の複数の箇所を結びつける。判断が2段階になる場面
【内訳】
A … 5問、B … 4問、C … 1問
【条件】
・BとCの設問文は、当社の社員が実際に遭遇する場面で書く。
例 … 取引先から共有フォルダのリンクが届いた、出張先で社内資料を印刷したい
・Cの設問も、正解の根拠はすべて教材の中にあるようにする
・難易度が上がっても、設問文の長さは100字を超えない
・各設問に難易度の記号を付ける
作り直したあと、難易度ごとに想定正解率を書いてください。
想定の根拠も1行添えてください。
Bの設問で具体的な場面を指定すると、暗記ではなく判断を問う形になります。「社外へのファイル持ち出しには申請が必要である」という正誤問題は覚えていれば解けますが、「出張先のホテルで社内資料を印刷する必要が出たとき、最初に取るべき行動はどれか」になると、教材の手順を自分の状況に当てはめる必要があります。
想定正解率を書かせておくと、実施後の答え合わせに使えます。想定8割の設問が実際には4割だったなら、設問か教材のどちらかに問題があります。
具体例3:配布用と採点用に分けて出力する
設問がそろったら、受講者に渡す紙と、採点する側が持つ紙を分けます。会話の中に長文を出させると修正のたびに全文が出力し直されるので、長い文書を別画面で編集する機能を使うと扱いやすくなります。
確定した10問を、2つの文書に分けて出力してください。
編集しやすいように、それぞれ別画面の文書にしてください。
【受講者配布用】
・冒頭に、研修名、実施日、所属、氏名の記入欄
・冒頭に注意書き … 制限時間15分、教材の参照可否、修了の目安
・設問は1から10まで連番。選択肢は1から4
・正解、根拠、解説は含めない
・末尾に解答欄。設問番号と空欄を横一列に並べる
【採点者用】
・表形式。列は 設問番号 / 難易度 / 正解 / 根拠の見出し / 想定正解率 / 確かめたい行動
・表の下に、誤答それぞれの誤りの理由をまとめる
・末尾に、採点後に見直す観点を3点
受講者用に解説を含めないのは、解答用紙と解説を同時に配ると設問が成立しないからです。解説は採点後に別紙で配ると、間違えた人がその場で教材のどこを読み直せばよいか分かります。
研修そのものの資料づくりから見直したい場合は、研修資料をAIで作る手順に構成案とワークシートの作り方をまとめています。
配る前に担当者が確認する手順
生成された設問をそのまま印刷すると、正解の取り違えが必ず混ざります。10問なら15分の確認で済むので、次の順に見ます。
- 根拠の引用欄が埋まっているかを全問チェックする。空欄の設問はその場で削除する。
- 引用された文が、教材の中に本当に存在するかを検索して確かめる。見出し名だけ合っていて本文が言い換えられている設問は、内容がずれている可能性が高い。
- 正解の番号を隠して、自分で10問を解く。教材を読み込んだ担当者が迷う設問は、受講者はまず解けない。
- 選択肢を縦に並べ、長さと文末の形をそろえる。正解だけ丁寧な文になっている設問は、読まずに当てられる。
- 実務と食い違う選択肢がないかを、現場の1人に見てもらう。教材が古いまま運用だけ変わっている箇所は、ここでしか見つかりません。
3番目の自分で解く工程を飛ばさないでください。設問を眺めるだけだと、正解を知っているせいで難易度の見当がつきません。
正解率が低かった設問の直し方
実施後、正解率が想定を大きく下回った設問は、原因を分けてから直します。設問の作りが悪い場合と、教材がその論点を十分に扱っていない場合では、打つ手が逆になります。
| 見えた状態 | 考えられる原因 | 打つ手 |
|---|---|---|
| 特定の誤答に回答が集中した | その誤答が教材の記述と紛らわしい | 誤答を作り直すか、教材の該当箇所を書き足す |
| 回答が4つに均等に散った | 設問文が何を問うているか伝わっていない | 設問文を場面の描写に書き直す |
| 正解と誤答が二分した | 教材でその論点を1行しか扱っていない | 設問を落とし、次回の教材に節を追加する |
| 教材参照可なのに正解率が低い | 教材のどこを見ればよいか分からない | 教材に見出しを足し、設問の語を教材の語にそろえる |
原因の切り分けを含めてChatGPTに投げると、書き直し案まで一度に出ます。
実施した理解度テストの結果です。正解率が低かった設問を見直してください。
【結果】
設問3 … 正解率38%。選択肢2に52%が集中
設問7 … 正解率41%。4つの選択肢にほぼ均等に分散
設問9 … 正解率44%。正解と選択肢1で二分
【それぞれについて答えてください】
1. 設問の作りに原因があるか、教材の記述量に原因があるか、どちらと考えられるか
2. そう考える理由を、添付した教材の該当箇所を引用して説明する
3. 設問側に原因がある場合は、書き直した設問と選択肢を出す
4. 教材側に原因がある場合は、教材に書き足すべき内容を3行で示す
5. 判断がつかない場合は、断定せずに追加で確認すべきことを挙げる
推測で答える箇所は、その旨を明記してください。
5番目の逃げ道を用意しておかないと、ChatGPTはどの設問にももっともらしい原因を割り当てます。受講者の回答傾向だけでは分からないことがあるので、判断を保留させたほうが正確です。保留になった設問は、受講者数名に直接聞くのが早いです。
手順を文章として整える作業を同じ流れで進めたい場合は、ChatGPTで業務マニュアルを作る手順が参考になります。
うまくいかないときの対処
教材にない内容が混ざる。 根拠の引用を求めているのに教材にない文が引用されているときは、添付ファイルの読み取りがうまくいっていない可能性があります。教材の冒頭3行を引用させて、内容が一致するか確かめてください。一致しないなら、テキストを直接貼り付けて作り直します。
選択肢が似すぎて正解が2つある。 「設問4の選択肢2と3は、どちらも教材の記述に合っています。教材のどの1文で区別できるかを示し、区別できないなら選択肢3を別の内容に差し替えてください」と、判別の根拠を先に聞きます。
同じ論点の設問が重複する。 10問のうち3問がパスワードの文字数を問う設問になるような偏りは、「10問が確かめる行動を一覧にして、重複しているものを指摘してください」と自己点検させると見つかります。
設問文が長くなる。 字数を指定しても守られないときは、「設問文から、解答に不要な状況描写を削ってください」と、削る対象を名指しします。
去年のテストを使い回したい。 前年の設問を貼り付け、「教材の今年版と照合し、内容が変わった箇所に関わる設問を指摘してください」と頼むと、改訂の影響を受ける設問だけが絞り込まれます。全問作り直すより早く済みます。
他のツールで同じ作業を進める手順は、Geminiで研修の理解度テストを作る手順とClaudeで研修の理解度テストを作る手順にまとめています。
まとめ
直近で実施する研修を1つ選び、教材のファイルと出題範囲の行数を手元にそろえてください。研修ごとのプロジェクトを作って前提文を置き、四択10問を作らせ、根拠の引用が埋まっているかを全問確認します。正解を隠して自分で解き、迷った設問だけを書き直せば、配れる状態になります。実施後は正解率の低い設問に印を付けて保存しておくと、翌年の教材を直す材料がそのまま残ります。
よくある質問
ChatGPTが作った理解度テストは、そのまま受講者に配れますか?
配れません。正解の設定が入れ替わっている設問や、教材に書かれていない知識が正解になっている設問が混ざります。教材と一問ずつ突き合わせ、正解の根拠が教材のどこにあるかを確かめてから配布してください。確認は10問で15分ほどです。
教材に書いていない内容が出題されるのを防ぐにはどうすればいいですか?
各設問に、正解の根拠となる教材の見出し名と本文の引用を必ず添えさせてください。根拠を書けない設問はChatGPTが補った知識から作られたものなので、その場で落とせます。範囲を縛る指示だけでは漏れるため、根拠の併記と組み合わせます。
研修資料のファイルをChatGPTにアップロードしてもよいですか?
自社の生成AI利用ルールに従ってください。社内の設備名や取引先名が載っている資料は、その部分を伏せ字に置き換えたファイルを作れば出題には足ります。判断がつかないときは、情報システム部門に先に確認するのが確実です。